「この番組に本当に来ていただきたくて。今日、叶いました」
田中泰延がそう言ってお迎えしたのは、喋り屋・古舘伊知郎さん。二人がじっくり一緒に語るのは、『伝えるための準備学』の刊行時に本づくりやイベントでお話しして以来です。

田中泰延が、いま会いたい人・話したい人と、聞きたいことを語る「田中泰延のふたりごと」。
古舘さんから見た田中泰延とひろのぶと株式会社、『トーキングブルース「2025」』について——お馴染み”古舘節”もどんどん飛び出してくるトーク。古舘伊知郎さんと田中泰延の”ふたりごと”を、ちょこっとのぞいてみましょう。
(執筆・編集:廣瀬翼)
※本記事は、2026年5月2日のラジオ大阪の放送を元に再構成しています
※ この番組は、「結果のわからないチャレンジャーを応援する」FIRST DOMINO株式会社の提供で放送されています。
【今夜のお話】
「結構いい奴を演じてるんですよ」
田中
さて、今日のゲストです。あまり前置きは必要ございません。ようこそお越しくださいました。古舘伊知郎さんです!
古舘
どうも、本当にご無沙汰しております。
田中
ご無沙汰しております。
古舘
今日は、呼んでいただいてありがとうございます。
田中
こちらこそです。
古舘
さっきね、ちらっと田中さんとお会いしたときに、「やっぱり、面と向かうと緊張するんだ」って話を聞いたじゃないですか。
田中
はい。
古舘
だから僕、結構いい奴を演じてるんですよ。ずっと伏し目がちになってたでしょ?
あんまりね、こういう喋りの仕事を慣れてるとばかりに偉そうに堂々としてると、田中さんがもし、ちょっと心が乱れるんだったらいけないと思って。ず〜っと下向いてるの、結構苦痛でしたよ。
田中
そんな演技まで?! いやいや。
古舘
こういうことを言わなきゃいいのに、恩着せがましく言うっていうところにね、自分の嫌らしさを感じますね。
田中
このね、まず自分を「いやらしい人や」っていうのを、古舘さんはおっしゃる。それを言うことによって、「本当はいやらしくないんだよ」っていうことを言うという、この複雑なジャブからいつも始まる。
古舘
反動を誘うね。そういう私の手口をなんでド頭で言うんですか、田中さん。まあ、何の反論もできないんですけど、はい。
糸井重里さんは、声が聞こえてくる字
田中
そんな古舘さん、もう、この番組に本当に来ていただきたくて。糸井(重里)さんに来ていただいたときにも、「古舘さんにも来ていただきたいと思ってるんですよ」っていう話をして、今日叶いました。
古舘
いやぁ、うれしい。
この前ね、糸井さんから久々に、お手紙が来ましてね。いろんな人にそういうことを送ってくれてるんだろうけど。「いいな! と思ったハンドクリームがあったから」って、自筆で書いて送ってくれて。
田中
はい、はい。
古舘
今、使わせてもらってて。ほんと手の甲がつるんつるんなんですよ。
糸井さんのあの丸っこい字でちょこちょこっと「元気? 古舘さん」なんて言われるだけでジーンときちゃいますね。
田中
わかります。
古舘
あの人の優しさ。あれ、腹立たしいわ(笑)。
田中
字もなんかね、優しい。80年代からずっと一緒の、柔らかい字なんですよ。
古舘
糸井重里のね。ちょっと『となりのトトロ』のナレーションを思い出すような、ナレーションじゃない、セリフですね。お父さん役。
田中
そうですね。
古舘
なんか、字なのか声なのか、わかんないですよ、文面見てて。それを彷彿とさせるから。
田中
ああ。あの人も、声が聞こえてくる感じの字ですね。
古舘
それなんですよ。悔しい、それを言いたかったのに! 僕はちょっと喋りが長かったですよ、今。そう、田中さんの言う通り!
田中
もう勘弁してください。
古舘
いやいや、本当にそうですよ。
ひろのぶと株式会社は「集団人たらし」
田中
僕はラジオ番組始めて、まだ半年ですからね。そこに古舘さんに来ていただいて、僕はもう、何をすりゃいいのかよくわかんないですよ。
古舘
いやいや。僕はね、田中さん及び「ひろのぶと」という出版社は本当に要注意だと思ってるんですよ。ほんと、人をいい気持ちにさせたら、天下一品ですよね。集団人たらし。
田中
(笑)。
古舘
だって今日、みなさんね、大阪でラジオ聴いてらっしゃる方ね。私はね、声を大にして言いたい。
普通に「ピン」って機械音が鳴って、無機質なエレベーターがパッと開いた。何気なくマネージャーの工藤くんと二人で僕はポッと降りた。
目の前のエントランスロビーにダーっと人が並んでいて、扇状に手をつないで鎖状になっていて、「ようこそ!」ってやってくれたじゃないですか。
田中
組体操をやろうと。

古舘
いや僕ね、正直言って、天国に召されたのかと思った。
田中
わっははは。
古舘
だってそんなこと、誕生日でも何でもないわけだし、やってもらったこともないのに。ああやって気持ちを沸き立たせるっていうのは、すごいですよね。できない、普通。普通できない。
田中
やっぱりなんか喜んでもらおうという、まあそこがね。今日は、ラジオ大阪OBCにお越しになっていただいてますけど。
古舘
はい。
田中
僕らやっぱ、大阪の血がそうさせてしまうんですよね。
古舘
あ、やっぱそれ大阪ありますか。
田中
僕、今日着てるTシャツが「道頓堀」っていうね。

古舘
いいですね〜。もう最悪何かあったら、飛び込みゃいいんですからね、道頓堀っていうのは。
田中
飛び込めば。もう身を捨ててウケる方向に行けば、なんとかなるという。
古舘
いや、だからさっきも言ったように、本当にいい気持ちにさせるのがうまいから。もうね、私は喜んで来ちゃったわけですよ。
田中
ありがとうございます。
古舘
本当にありがとうございます。
そこまで言うなら、入れてほしい
田中
そして古舘さんといえば、言わずと知れたアナウンサー時代、テレ朝からプロレス、そしてフリーになってからもF1、歌番組、バラエティ。そして報道ステーションという歴史がある中で。
古舘
あ、そこまで言うなら紅白3回やったっていうのも入れてほしかったりしたりね、ええ。
田中
そうですね。紅白の司会を3回やった。
古舘
上沼(恵美子)さんと確執を生み、そして歴史的な和解をした。
田中
和解があった。
※古舘伊知郎さんと上沼恵美子さんは1994年と1995年の『NHK紅白歌合戦』で共に司会を務めました。その後、長らく共演はありませんでしたが、2023年7月に上沼さんのYouTubeチャンネルに古舘さんが出演。約28年ぶりの”和解”となりました。
古舘
それ入れてくれると、もう万全でした。
田中
万全でした。
その中で、しかし、ずっとライフワークとしてやられてきたのが、一人舞台。『トーキングブルース』。
古舘
はい。もうノーセット、マイク一本、2時間以上喋りまくる。もう本当に歳を忘れて、私はそれライフワークと思ってやらせてもらってきてます。
『トーキングブルース「2025」』大阪公演で……
田中
今年も私は大阪公演に『トーキングブルース「2025」』。2026年の公演なんだけど、2025年のことを総括するようなトークを。
古舘
はい。
田中
大阪公演、伺いまして。
古舘
ありがとうございます。
田中
今年は4年ぶりの全国ツアーがあったんですよね。東京、福岡、愛知、大阪、そしてつい最近の神奈川が千秋楽。
古舘
横浜がね、最後でしたけど。
田中
はい。
※2025年12月7日の東京公演からスタートし、2026年3月20日にツアー最後の神奈川(横浜)公演がありました。
古舘
でも、大阪のときに全部終わって、ホッとしてて。頭ボーッとしてるんですよ。
田中
うん。
古舘
やっぱり2時間以上、ハイテンポであれだけ喋りまくると、ボーッとしてるんですね。
そういう時に、田中さんはじめ、同じ会社の人が数人いてくれて、「いや〜、大阪公演聴けてよかった!」って。やっぱり知ってる人の顔でね、心から言っていただけてるのが、もう無類の喜び、無常の喜びなんですよ。
それで、「ありがとうございます。田中さんはじめ皆さんありがとうございます。ご無沙汰してます。本も出させてもらって、準備学」って言って。踵を返して帰る「くまのプーさん」のような田中さん。もう一度振り返って斜め45度から「すいません、ラジオ出てくれません?」っていうね。
田中
(笑)。
古舘
あの、人の痛点を突いてくる、世界一の鍼灸師のような。ツボを5ミリあえて外して、「出てくれません?」くらいの。
「出てくださいよ」じゃないんですよ。「決定権はお前本人にあるぞ」っていう投げ方。あれはグッと来ますね。あれを嫌だという人間がいるでしょうか。それでもなおホルムズ海峡を閉じる奴がいるでしょうか。人間ならば開きますよね、本来。
田中
ふっははは。
古舘
私はあれやられましたね。本当に。
田中
それが今日の出演につながった。よかったぁ〜、お願いしてみるもんだなと。
古舘
もう「喜んで」って言っちゃったじゃないですか。居酒屋のバイトでもないのに「喜んで!」。「ビアタン2丁!」みたいな感じですよ。これはもう田中さんの力なんですよ。センスなんですよ。
田中
ありがたい。
古舘
ね! ディレクターの宇田川さん、そうですよね!
宇田川ディレクターも、気合い入ってます
古舘
また宇田川さんが、にこにこ笑ってらっしゃいますけども。
白い形状記憶合金のシャツにレジメンタルストライプタイ、そしてワインカラー、ダークグレーのスーツに身を包んでいる。虎ノ門あたりの天下り団体、社団法人の責任者みたいな感じの佇まい。とてもラジオのディレクターとはちょっと思えない。
田中
いや、僕も今日初めて見たんです、あんな宇田川さんの姿を。今日古舘さん来られるから、ちゃんとしていこうっていう。
古舘
いや、おかしいおかしい、それは。
田中
もう家の奥からね、引っ張り出してきたんです、あれ。
古舘
ディープ・パープルが官邸を訪ねてるわけじゃないんですから。誰もそんなこと言ってないし、ハマってないんですけど。
なんで、いつもこんな格好じゃないんですか、宇田川さんは?
田中
違うんですよ、普段は。
古舘
ディレクターらしいカジュアル?
田中
ディレクターらしい。
古舘
今日だけ、畏まってるんですか?
田中
普段はもうね、肩からサマーセーターかけてね、ハンティングワールドのポーチ持ってね、襟を上に立てて。
古舘
そんな小石田純一みたいな昭和レトロな。
田中
「よう、田中ちゃん、ノッてる?」みたいな感じで。
古舘
「昨日、習志野カントリーで49叩いちゃって」って。普段もっと悪いだろうってスコア。遠くから見たら「七五三」かと思いました。
田中
いや、本当に。
古舘
見えない千歳飴が見えます。
今日の曲紹介|吉田拓郎「イメージの詩」
田中
そんな宇田川ディレクターから、もう歌の紹介をしてくださいということで。
古舘
そうだ、そうだ。
田中
この番組では毎週ですね、ゲストの方に思い入れのある一曲を紹介していただいてますが。今日古舘さんのリクエストは吉田拓郎さんの「イメージの詩」。これはまた、どういう思いで?
古舘
僕はもう中学・高校の、まあ言ってみれば、自分で言うのもちょっと恥ずかしいけど、思春期。多感な頃に拓郎さんの歌に出会ってですね。
だからあの当時はアルバム、LPレコードを秋葉原の石丸電気に買いに行くなんていうのは、もう買いに行きたいのに、万世橋渡るのが嫌なんですよ。
行ったら出会って買う。買って帰ってきて聴くのが楽しみなのに、買っちゃったら終わるような気がして。もうちょっと時間潰そうかなぐらい期待感を持ってた時代なんですよ。
田中
いやー、そんなね、レコードを大事に聴いていた、僕も大好きな歌です。聴いてもらいましょう。吉田拓郎「イメージの詩」。
戦争が起きている今、噛みしめたい歌
♪ 吉田拓郎「イメージの詩」再生中 ♪
(静かに、しみじみと曲を聴きました)
♪ 吉田拓郎「イメージの詩」おわり ♪
田中
吉田拓郎「イメージの詩」でした。
古舘
いやぁ……。
田中
いやー、いいですよね。
古舘
やっぱり今世界でね、田中さん、戦争が起きていて。そういう時にこの歌、今一度噛みしめたいなって、改めて思いましたね。
田中
はい。
では、来週も古舘さんに引き続きお話をうかがいます。来週は『伝えるための準備学』という本についてうかがっていこうと思います。
本日のゲストは古舘伊知郎さんでした。ありがとうございました。
古舘
ありがとうございました。
おまけの「アフタートーク」
田中
いや〜、でも、吉田拓郎はその、何て言うか。やっぱりボブ・ディランがいなかったら、ああいう音楽始めなかったと思うけど、ボブ・ディランよりずっと文学的ですよね。
古舘
っていう感じがしますね。
田中
えぇ、なんというか。
古舘
反体制のようでいて、プロテストソングじゃないってご本人も言ってんですよ、自分の歌はね。
田中
はい、はい。
古舘
もともと広島からアイドルになりたくて、ナベプロに入りたくて来たって。
田中
はぁ〜。
古舘
僕、報道ステーション終わるときに、あまりにもファンなんで、ダメ元でお声をかけさせてもらったら、「古舘さんなら」って出てくれたんですよ。で、ロングインタビューやったんですよ、報ステ終わる前に。
田中
はい。
古舘
そこであられもないことを何でも語ってくれて。で、その時にやっぱり「自分は反体制じゃないし」とか、「いい加減な歌つくってんだ」って言えば言うほど、またかっこいいんですよ。本当に。
田中
うん、うん。
古舘
今のなんか全部反証っていうか。「たたかい」のあたりからっていうのは、同じフレーズをかませながら、逆の真理を言うみたいな。あれは訴求力すごいですね。
田中
そうですね。やっぱ歌詞の力がすごい。
古舘
すごいですね。
田中
うん。
<次回も引き続き古舘伊知郎さんをゲストにお迎えします>
【ゲストのプロフィール】

古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)
フリーアナウンサー、喋り屋
1954年東京生まれ。立教大学卒業後、1977年テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「ワールドプロレスリング」などを担当。鋭敏な語彙センスとボルテージの高さが際立つプロレス実況は「古舘節」と称され、絶大な人気を誇る。1984年、フリーとなり、「古舘プロジェクト」設立。F1などでムーブメントを巻き起こし、「実況=古舘」のイメージを確立する。3年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会を務めるなど、司会者としても異彩を放ち、NHK+民放全局でレギュラー番組の看板を担った。その後、テレビ朝日「報道ステーション」で12年間キャスターを務め、現在、再び自由な喋り手となる。2019年4月、立教大学経済学部客員教授に就任。ライフワークとして1988年からスタートしたトークライブ「トーキングブルース」は”一人喋りの最高峰”と称され、厚い支持を集める。著書に『喋らなければ負けだよ』(青春出版社)、『喋り屋いちろう』(集英社)、『伝えるための準備学』(ひろのぶと株式会社)、『寝ても覚めても煩悩』(小学館集英社プロダクション)など。
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古舘伊知郎さんの著書
伝えるための準備学
古舘伊知郎|ひろのぶと株式会社
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田中泰延
映画/本/クリエイティブ
1969年大阪生まれ。株式会社 電通でコピーライター/CMプランナーとして24年間勤務。2016年退職し「青年失業家」を自称し執筆活動を開始。2019年、文章術を解説する初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。16万部突破。2020年、印税2割スタート・最大5割の「累進印税™︎」を掲げる出版社 「ひろのぶと株式会社」 を創業。






