「まずは自分を褒めること」。『寝ても覚めても煩悩』に寄せられた「褒め上手になりたい」という感想に、そう応える古舘伊知郎さん。
さらに、38年ぶりに帰ってきたプロレスの実況についても、トーク。久しぶりについた実況席で、古舘さんが探したものとは……?
田中泰延が、いま会いたい人・話したい人と、聞きたいことを語る「田中泰延のふたりごと」、古舘さんをお迎えする第四夜。古舘伊知郎さんと田中泰延の“ふたりごと”を、ちょこっとのぞいてみましょう。
(執筆・編集:廣瀬翼)
※本記事は、2026年5月23日のラジオ大阪の放送を元に再構成しています
【古舘伊知郎さんゲストの回】
▶︎第一夜(5月 2日放送)
▶︎第二夜(5月 9日放送)
▶︎第三夜(5月16日放送)
▶︎第五夜(5月30日放送)
※ この番組は、「結果のわからないチャレンジャーを応援する」FIRST DOMINO株式会社の提供で放送されています。
【今夜のお話】
褒め上手になるには「まず、自分を褒める」
田中
さて、本日のゲストは、この方にお話をうかがいます。古舘伊知郎さんです。
古舘
お世話になります。よろしくお願いします。
田中
よろしくお願いいたします。今週もまた来ていただいて。ちょっとね、引き続きこちらの本、『寝ても覚めても煩悩』、最新刊のお話うかがいたいんですけどね。

田中
うちのスタッフの廣瀬、「メガネ一号」と言われる、一号か二号かわかんないけど、メガネ女子・廣瀬がですね。この中で「相談4」のね、「大人だって褒められたい。自分の機嫌を自分で取るには?」っていう質問がすごく腑に落ちたということで。「褒め上手になりたいな」っていうふうに廣瀬は思ったみたいなんですよ。
この、「褒める」っていうことの、なんか古舘さんの決めてらっしゃるというか、「これ技だ」っていうのはあったりしますか?
※ひろのぶと株式会社のスタッフには加納穂乃香、廣瀬翼の二人の女性がおり、どちらもセルフレームの眼鏡をかけています。
古舘
技かスキルかっていうとそうでもないかもしれないんだけど、ちょっとこう染み込んでるのは、まず、人は褒められたいから、褒め上手になるべきじゃないですか。思いやりも含めて。
田中
はい。
古舘
でも、その時にちょっと忘れがちだなと思うのは、先に自分を褒めることですよ。
田中
はぁ〜!
古舘
この前話したね、自我の話と矛盾するように聞こえちゃうんだけど。まず自分っていう設定がある以上は逃れられないという前提で言えば。自分を褒めることで、沸き立たせることで、相手が共鳴するっていう。
田中
ほぅ〜!
古舘
シンクロニシティじゃないけど。こうね、お互いに震え合うっていうか、楽器同士みたいに。
田中
はい。
古舘
だから、まず自分を褒めるってことを忘れがちなんですよ。
田中
自分を卑下してあなたは偉いっていうんじゃないんですね。
古舘
それもありなんですけど、卑下しようが何だろうが、まず自分を褒め称える。
田中
褒め称える。
古舘
だから、「自分がこんなにこの人の素晴らしさをわかってるんだから、すごいじゃん」っていうふうに。
田中
なるほど!
古舘
「頑張ってんな、お前」って、メタ認知で自分を励ましたり褒めたりして、「相変わらずね、悪いとこもあるけど、いいとこもあるよ」っていうふうにウォームアップしていくと、完全に相手を褒める暖気運転、終わってますから。
田中
暖気運転!それが。
古舘
はい、アイドリング終わってます。そこから「なるほど」とか「素晴らしいですね」ってなってくるんですよ。
まず自分を騙すぐらいのやり口が必要ですね。
田中
ああ、それは、なるほどなぁ。
古舘
僕はだから、あの、自分でバーっと喋るっていうのも、自分を褒めてるようなもんですから。
田中
はい。
古舘
だからこれを「舌先の一人ねぶた祭り」と呼んでるわけですよ。
田中
一人ねぶた祭り。
自分ばっかり褒めてたら、そのうち嫌気が差してくる
古舘
本当に落ち込んだり、ネガティブになったり。僕、陰キャですから、基本的には。
田中
はい。
古舘
陰キャな僕がなんで一生懸命こんなに喋る仕事を半世紀近くやらしてもらってきてるかっていうと、お客さんのおかげなんだけど。それは、陰キャが嫌なんで。
田中
うん。
古舘
喋ってるうちに自分を褒めちぎり、自分が沸き立つんですよ。脳内の神経伝達物質も走るんだと思うんですよ。で、はじめて人を盛り上げられるわけですよ。
田中
なるほど。
古舘
自分が素の陰キャのままで人を褒められないんですよ。
田中
うーん。
古舘
だから神輿を、相手という神輿を担ぐためには、その手前で自分の祭りダコ・神輿ダコをガンガンなでてあげて、「こんな俺だから担げんだ」って思わないと。
田中
担いでる自分をまず褒める。
古舘
そうそうそう。まずそれを密かにやればいいことです。それが”準備学”なんですよ。
田中
なるほど。
古舘
それが準備なんです。で、それやると絶対相手を褒めざるを得なくなりますから。自分ばっか褒めてたらね、もう自分で嫌気が差してきますから。
田中
自分で嫌気が差す。いや、褒めが人の方を向くんですね。なるほど。
古舘
トランプぐらいじゃないですかね、自分を褒め続けて生きていける人は。
田中
そして、みんなにはそんなに褒められてないっていうね。
古舘
そうそう、そうそう。結果的には。
田中
結果的には(笑)。
古舘
それでもいいんだと思うんですよ。自分が世界だから。
田中
ああ、そうですよね。
古舘
自我肥大だから、あの人は多分。
田中
今まさにね。
古舘
はい、そうだと思うんですよ。
いい人って、バレちゃっていいんですか?
田中
うちの廣瀬なんかは、この『寝ても覚めても……』。
古舘
「うちの廣瀬」って音がいいですね。
田中
うちの廣瀬。
古舘
「うちの廣瀬」ってのは、一塊になってますもんね。
田中
そう(笑)。うちの廣瀬はこの『寝ても覚めても煩悩』を最後まで読んで、感想としては「古舘さん、いい人ってバレちゃっていいんですか?」っていうふうに。
古舘
あぁ〜……なかなかうまいこと言いますね、うちの廣瀬は。
田中
うちの廣瀬の感想でございました。
古舘
いや、バレたいんだもん、だって。
田中
バレたいんだ。
古舘
「いろいろ悪態ついてるけど、結果悪いやつじゃないんじゃん」って言われて死んでいきたい。
田中
わははは。
古舘
もうその人生受け狙いの準備学ですからね。
田中
なるほど。
古舘
その準備をやってるわけですよ。だからもうそれは図星です、うちの廣瀬。
田中
いや、うちの廣瀬、鋭い。
38年ぶりのプロレス実況への挑戦
田中
そんな古舘さん。まだまだ新しいことをチャレンジされていると。
古舘さんといえば、テレビ朝日時代のプロレス、『ワールドプロレスリング』の実況でしたけれども。この21世紀も、四半世紀経った今また、『プロレスリング・ノア(NOAH)』で実況に、またまた挑戦していると。
※ワールドプロレスリング:1969年より放送されているプロレス中継番組。現在はテレビ朝日および系列局で放送。1973年3月までは日本プロレス、以降は新日本プロレスの中継番組となっています。
※プロレスリング・ノア:2000年に立ち上がったプロレス団体。
古舘
はい。なんかあの——2026年1月1日、私の自我は日本武道館にあったわけです。
で、そこで38年ぶりにプロレスの実況を、僕は新日本プロレスで10年実況して育って、1977年から87年までやってたんですけども。38年ぶりに他団体のNOAHの実況を一試合だけやらせてもらって……ちょっと病みつきになっちゃって。
田中
(笑)。
古舘
これね、マスターベーション的な言い方で申し訳ないんだけど、なんかね、あの、一人同窓会ってなかなかできないですよ。
田中
はい。
古舘
だって38年前までの自分に70過ぎて出会うなんて。なかなか一人同窓会ってないじゃないですか。びっくりしましたね。もう暮れから酔いしれてるんですよ。
田中
はぁ〜。
古舘
文房具屋さん行って、時代遅れなルーズリーフのノートを買ってきたりして。これで38年前まで10年間、その試合の基礎資料を書いてたな、なんて。放送席に置いてたなと。
で、ルーズリーフの真新しいノートを開いた瞬間に、自動書記のように書けるんですよ。
田中
はい。
古舘
GHCジュニアヘビー級選手権って書けるんですよ。「あー、体と脳が全部覚えてんだ」と思って。
田中
うん、うん。
古舘
で、武道館の放送席に座って、僕から見たら圧倒的に若いアナウンサーとスイッチして、僕が一試合だけセミファイナル喋らせてもらうっていう時に、パーッと武道館全体のね、この1階席・2階席あたり、アリーナのあたりからこう見上げたときに、何を探してるか、私は。
田中
はい。
古舘
毎週毎週、どこの体育館行っても「プロレスラー藤原喜明頑張れ」「燃える闘魂アントニオ猪木」っていう横断幕が張り付けられてるんですけど、1階席とか2階席とかそういうところに。
そこに「闘いのワンダーランド 古舘伊知郎頑張れ」っていうね、実況アナにもあったんですよ、横断幕。
田中
横断幕が。
古舘
それを38年経っても、一人同窓会とか甘いこと言いながら、私は「闘いのワンダーランド 古舘伊知郎」を探してたんですよ。
田中
はい。
古舘
そんなもんあるわけないじゃないですか。
田中
ないんだ。
古舘
時代は38年、諸行無常で移り変わってるんで。若いNOAHを支えてるファンなんか、俺のことなんか「ジジイ引っ込め」ですから。だからそこで我に返るんですよ。現実に引き戻されるんですよ。
田中
はい。
古舘
そういうのが好きなんですね。
田中
そういうのが好きなんだ。
古舘
一人SM。酔いしれたり、自分に鞭打ったり。「バカじゃないのお前」って。「お前のファンなんか一人もいないよ、ここに」って。
田中
ほう。
古舘
で、ABEMA TVっていうところが生配信やってるから、シニア層を取りたい。若い人中心にNOAHは今ガンガン人気が出てきてるから、シニア層を取りたいっていう、そこで僕の出番なわけじゃないですか。
田中
はい。
古舘
それなのに、1階席・2階席を埋め尽くしてる比較的若い人に。38年前の横断幕を所望していると。
田中
(笑)。
古舘
この自意識が嫌だから、「寝ても覚めても煩悩」だなと思うわけですよ。
田中
あぁ。
古舘
だから、そういうふうに、自分の今時の、その、なんていうの、雑誌とか本なんかの決まり文句、”現在地”がわかるわけです。現在地がね。
田中
なるほど。
古舘
それがもう、楽しくてしょうがないですね。
田中
それがやっぱり楽しい(笑)。
古舘
はい、楽しいです。
※古舘さんは本放送後、2026年7月18日のNOAH大阪でも実況を務められました。
70代で感じる20代との違い
田中
でもそれはね、これを続けていかれると、またやっぱり来ますよ。「闘いのワンダーランド 古舘伊知郎」っていう幕が。
古舘
いやいや、そこまではいかないと思うんですよ。もう声が出ないですから。ものすごいガナって張り上げてる声の継続力が、著しく落ちてるんですよ。20代と70代。当たり前のことを当たり前に語っておりますけども、今。
田中
はい、はい。
古舘
人間っていうのは、当たり前でつまんない、まっとうなこと言うなっていうとき、声を張るんですね。張ることによって人を騙そうとしてるっていう。
田中
なるほど(笑)。
古舘
本当に当たり前のことなんですけど、なかなか声が出づらくなってるんですよ。持続力がね。
田中
いや、でも今、改めて70代って自分で言われて、これ信じられないですけどね。
古舘
そういう言葉を誘ってますよね。てっきり68ぐらいに思えるっていうことを言ってほしいわけですよね。
田中
それ、あんまり差がないじゃないですか(笑)。
古舘
数えの”逆”で。
田中
逆でね。
古舘
“逆数え”で言ってほしいわけですよ。
田中
なるほど。
今日の曲紹介|あいみょん「猫」
田中
新しい挑戦を続けておられる古舘伊知郎さんですが、今日のリクエストは変わったとこ来ました。あいみょんで「猫」。こちらは?
古舘
僕はあいみょんさんの曲大好きなんですけど、中でもこの曲が好きなのは、2か所ありまして。
田中
はい。
古舘
一つはもう冒頭でね、歌い出しから夕焼けが街を包み込むっていうところでグッとくるんですけど。もう一つ、よく注意して聞いていただければすぐわかるんですけども。「バカバカしい」って言葉あるじゃないですか。
田中
うん。
古舘
僕ら普通に「バカバカしいな」とか言うじゃないですか。歌だから切るんですよ。「バカ、バカしい」ってなるんですよ。一旦バカバカしいのバカとバカに間があるんですよ。そうすると「バカしい」って新たな言葉が生まれるんですね。
田中
なるほど。
古舘
「キッチンにはハイライトとウイスキーグラス」って言ったとき、ウイスキーでもない、ハイライトでもない、「トト」っていう何かが現出するわけですよ。
それと同じで、バカしいっていう僕の知らなかった言葉が現出するんですよ。これだけでも旅なんですよ、一つの。
※「ハイライトとウイスキーグラス」:第三夜のリクエスト曲・ハナレグミ「家族の風景」の歌詞
田中
なるほど。
古舘
うるさいですね、歌の前にね。申し訳ないです、本当にね。
田中
その辺も、注意して聞いていただけたら幸いです。あいみょんで「猫」。
来週、最終回
♪あいみょん「猫」再生中♪
(静かに、しみじみと聴きました)
♪あいみょん「猫」おわり♪
田中
あいみょんで「猫」でした。本日のゲストは古舘伊知郎さんでした。
古舘
ありがとうございました。
田中
来週、もう最終回です。もう、寂しい!
古舘
あぁ〜、そうですね。
田中
よろしくお願いします。
古舘
お願いします。
おまけの「アフタートーク」
田中
すごい。第5回の台本、すごい、いい加減なこと書いてあるわ。
古舘
本当だ。
田中
「まだまだ喋り足りません。なんでもお話しください」って書いてある(笑)。
古舘
ぶっつけトークですね、これね。いやー、楽しいからあっという間です。
田中
あっという間です、ほんっとに。
古舘
本当にありがとうございます。
田中
いやー。
古舘
いやぁ、楽しい。なんか曲もしみじみ。
田中
古舘さん、やっぱ歌詞を大事に聴いておられるから。いつもね、曲間ってゲストの方と「あ、いい曲ですね。それで思い出したんですけど」とグダグダ喋るんですけど。
古舘
ええ。
田中
だいたい、もう全部聴いてしまいますね、これ。ほんで、あそこのメガネ二号の加納はですね、「曲間のトークもコンテンツにするから、喋れ喋れ」って言うんですけど、聴いちゃうんですよ。
※「FIRST DOMINO presents 田中泰延のふたりごと」の動画は加納穂乃香さんが編集しています。
古舘
ああ、すいませんでした、加納さん。私が悪いんです。
田中
(笑)。でも、発見があるな。歌詞ってやっぱ、そういうふうに聴かないですからね。
古舘
僕はそうとしか。だから偏ってるというか、間違った聴き方してますから。
田中
いやいやいや。
古舘
音楽のことを知らない・わからないから、やっぱ歌詞ばっかりを聴いてしまう偏り。バイアスをかけてる。で、勝手な解釈して楽しんでる。だから間違った解釈がいっぱいあると思うんですよ。
田中
いやでも、その解釈の幅が古舘さん流なのが、おもしろいと思うんですよね。
古舘
そうですかね。
<次回、最後の第五夜です>
【ゲストのプロフィール】

古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)
フリーアナウンサー、喋り屋
1954年東京生まれ。立教大学卒業後、1977年テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「ワールドプロレスリング」などを担当。鋭敏な語彙センスとボルテージの高さが際立つプロレス実況は「古舘節」と称され、絶大な人気を誇る。1984年、フリーとなり、「古舘プロジェクト」設立。F1などでムーブメントを巻き起こし、「実況=古舘」のイメージを確立する。3年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会を務めるなど、司会者としても異彩を放ち、NHK+民放全局でレギュラー番組の看板を担った。その後、テレビ朝日「報道ステーション」で12年間キャスターを務め、現在、再び自由な喋り手となる。2019年4月、立教大学経済学部客員教授に就任。ライフワークとして1988年からスタートしたトークライブ「トーキングブルース」は”一人喋りの最高峰”と称され、厚い支持を集める。著書に『喋らなければ負けだよ』(青春出版社)、『喋り屋いちろう』(集英社)、『伝えるための準備学』(ひろのぶと株式会社)、『寝ても覚めても煩悩』(小学館集英社プロダクション)など。
* * *
古舘伊知郎さんの著書
伝えるための準備学
古舘伊知郎|ひろのぶと株式会社
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【古舘伊知郎さんゲストの回】
▶︎第一夜(5月 2日放送)
▶︎第二夜(5月 9日放送)
▶︎第三夜(5月16日放送)
▶︎第五夜(5月30日放送)
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放送:毎週土曜 18:45〜19:00
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● ハガキ送付先:〒552-8501 ラジオ大阪「田中泰延のふたりごと」
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田中泰延
映画/本/クリエイティブ
1969年大阪生まれ。株式会社 電通でコピーライター/CMプランナーとして24年間勤務。2016年退職し「青年失業家」を自称し執筆活動を開始。2019年、文章術を解説する初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。16万部突破。2020年、印税2割スタート・最大5割の「累進印税™︎」を掲げる出版社 「ひろのぶと株式会社」 を創業。






