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2026年8月【連載】唐木俊介のなんかいいたい

唐木俊介


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8/1(土)
海辺の松林で4時起床。BEFOREDAWNを聴きながら、ナッツとコーヒーを摂ってストレッチに勤しむ。4時50分に一番蝉が鳴き始めた。どうも蝉というのは、一匹が鳴き始めると他が一斉に追随するようだ。大多数が周りの様子を伺ってから行動するあたり、人間と似ている。
近くのビーチで1ラウンド。テイクオフして少し走るだけのプアーコンディション。途中、浮き輪を付けたまま沖に流された海水浴客を救助するなど。ワシ何屋やねん。


8/2(日)
早朝からウチヤマダフーヅ朝礼。今日はキンタマの話。曰く【キンタマという単語が日本語の中で一番ソリッドな脱力感を持っている】【断じて「性的な用語」ではない】とのこと。わかる。わかりすぎる。わかり哲也である。私も友人と「この世で一番面白い単語は何か」を論じ、最終的に「キンタマ」に辿り着いたことがある。
『Tシャツが乾くまで』の4話に没入。次の回まで待てない。明日起きたら金曜になっていてほしい。


8/3(月)
ワタナベアニさんのnoteを購読していると、記事公開のお知らせがメールで届く。昼食時にスマホを見るとnote公式からメールが届いていた。開くと「ウチヤマダフーヅ朝礼:キンタマとおすすめが届きました」と表示されてコーヒーを吹いた。
夜。読者のCさんから7月の日記にメッセージをいただいた。その書き出しを引く。
“散歩コースに、毎年一面ひまわりが咲き誇る畑があります。
 通るたび、毎日きれいです。
 秋にはコスモスになるのです。”
薫風一陣。何度も繰り返し読んだ。
あいうえお、本、会話、テレビ…文というのは、過去の誰かが発した言葉を知って、それらをどう並べるかだけ。それで相手が笑ったり怒ったり泣いたり抱きしめたりお金を払ったりミサイルを発射したりする。不思議である。


8/4(火)
朝起きたら奥さんが「夜中、すっごい雨だったね、ぜんぜん眠れなかった」と言う。同じ部屋で寝ていたのに、私は全く雨音に気づかずひたすら眠っていた。22時半から7時間、一度も起きずに朝まで爆睡して自分の屁で起きた。自分が愛おしい。
働いて泳いで本を読んでこれを書いている。まだ22時だがアホみたいに眠い。自分が愛おしい。


8/5(水)
敬愛する先輩ムラさんのお店“Trigger Coffee Industry”に、この日記の読者Yさんが行かれたとのこと。数年前、ムラさんについて『コーヒーにハマった先輩』という文章を書いた時も、Yさんは感想を寄せてくださった。先月の日記にムラさんのことを書いたら、Yさんから「今週家族で広島に行くので寄ります!」とメッセージをいただいた次第。私は仕事で同席できなかったが、ムラさんもYさんも楽しい時間を過ごされたとのこと。長いあいだ、何かと書き続けてよかった。


8/6(木)
原爆の日。一昨年書いた小説『ろくなもん』を読み返す。爆心地から2キロ圏内で被爆した祖父の話。自分で書いて自分で読む。自給自読。


8/7(金)
源泉徴収について調べていて、Geminiにあえて「源泉長州」と打ち込んだら「源泉長州は源泉徴収の誤変換と見なしてお答えします」と返ってきた。冷静すぎる回答に「キレてますか?」と聞くと「怒っていませんので、どうぞご安心ください」とのこと。何もわかってない。
明日から9連休。今年の盆は日本海に波がある。


8/8(土)
連休初日。朝から家族で岡山市内へ。娘のオープンキャンパスに付き添う。
夜は大学受験でお世話になった河合塾の岡本先生、村上先生と会食。少し前に岡本先生と食事に行った際、村上先生もまだ現役と聞いて、じゃあ次回は3人で!ということで集まった。楽しすぎたぞ…
高2の夏、ろくに勉強もせず遊び呆けていたところから急に思い立って大学受験を志した私は、その日のうちに親に頼みこんで、翌日河合塾に入った。人気講師と噂だった4人の先生のところへ行って「唐木といいます。大学に行くことにしました。何をすればいいでしょうか?」と聞き、そこから1年半、言われたことを全てやった。岡本先生と村上先生は4人のうちの2人で…
と、当時を思い出しながら話していると、その日のことを村上先生は覚えていて「それは違う。おまえはイカれた目つきでズカズカとワシのところに来て“なあ先生、オレ大学入りたいんじゃけど、何すりゃあええん?”言うてきたんじゃ。初対面で敬語も使わずになんじゃコイツ思うたわ」とのこと。当時の素行を振り返ると確かにそうかもしれない。大変失礼いたしました。
あれから28年が経って、今、娘が大学受験の準備をしている。色々と不安なこともあると思うが、当時の自分を見せて安心させたい。


8/9(日)
昼、前職でお世話になった面々の集まりに夫婦で参加。元上司である巨匠2人の料理に舌鼓を打つ。中には十数年ぶりの再会という人もいて、終始うれしく楽しい会であった。長い付き合いは尊い。
図書館で予約分を受け取って車のバッテリー&オイル交換。待ち時間でBEFOREDAWNと田中泰延のふたりごとを聴く。
夜は実家で食事。父がコスト度外視で仕込んだ料理の数々に舌鼓を打つ。今日は一日じゅう舌鼓を打っている。舌鼓界のジョンボーナムである。


8/10(月)
5時起床。本を読んで食事を摂り、7時過ぎから島根へ。予報を見るとサイズも風向きも申し分なし。期待しつつ目当てのビーチに着くと波情報とは正反対のウィンディコンディション。松田優作ばりの「なんじゃこりゃ」が出た。
今朝、司馬遼太郎の『世に棲む日日』を読んでいた。ロシアの軍艦が長崎に停泊していると聞いた吉田松陰が、その軍艦に乗ってロシアへ密出国することを企てるシーンがあった。なんとしても軍艦に乗りたい松蔭は、江戸から1ヶ月半かけてようやく長崎の港へ辿り着く。しかしそこに軍艦はない。聞けば軍艦はロシアに帰るべく3日前に出港したという。松蔭は嘆き、大浦ノ浜の岸頭で叫ぶ。
1ヶ月半かけて江戸から長崎まで行って軍艦に乗り損ねることに比べれば、2時間半かけて広島から島根まで来て波を外すことくらい屁でもないわ!と自分に言い聞かせながらジャンクコンディションでサーフ。
さて、今夜は涼しい。海辺の街外れで車中泊。盆踊りだろうか、遠くから祭囃子が聞こえる。ちょっとうるさい。


8/11(火)
4時半起床。目当てのビーチで6時入水。朝はオフショアのクリーンコンディション。物足りない小波なれど仲間と貸切で楽しめた。10時過ぎにはオンショアに変わりYAHYAHYAHのPVが撮れそうな風が吹き始めたので終了。風は明日の夕方まで吹く予報。サーフィンは諦めて一旦家に帰る。
帰ってワイパーのゴム交換。トイレ掃除からの部屋と物置の片付け。中身のわからないCD-Rが出てきて、再生すると1曲目がLSGの「Curious」だった。Monica、Brandy、NAS、Busta Rhymes…90年代しばり。懐かしさに唸り、しばらく聞き入る。
今日も夕方から涼しい。こういう夏の夜がいい。虫たちも楽しそうに鳴いている。ちょっとうるさい。


8/12(水)
5時起床。読書からの包丁研ぎ。久々に8000番まで攻めた。
台風の通過を確認して鳥取へ。15時から19時まで、ターナブルな良波を堪能。風も弱くコンディション上々。明日が本命なので軽めにやろうと思っていたが、結局全身バキバキになるまでやってしまった。スーパーで蒸し鶏と豆腐と少しの野菜を買い、持参していたナッツ、おにぎり、ゆで卵と合わせて食す。宮沢賢治スティーロ。
明日は確実に良波のはず。期待しつつ寝るとする。


8/13(木)
4時起床。目当てのポイントは期待通り、サイズも形も申し分なしの良波。うっすら明るくなった5時には着替えて入水し、1本目からグッドカーブで大興奮。
しかし難点がひとつ。アンドンクラゲが大発生していたのだ。この触手が肌に触れると激痛が走る。手の甲や首など刺されながら、それでも痛みに耐えて10時前まで粘った。小泉元総理に褒められてもいいレベルである。そののち近くのポイントへ移動すると、こちらも胸~肩サイズの超良波。しかも仲間と4人で貸切という幸運。即入水して体力が尽きるまで乗り倒した。
基本的に夏の日本海に波は立たないが、今回はタイミングよく低気圧が西へ抜けた。その余波で山陰各所にウネリが届いた。これも私の日頃の行いの賜物であり、今回良い思いをした全てのサーファーは私に感謝し、可能であれば募金などすべきである。
爆速で福山に帰り、前職の上司Sさんと会食。Mさんが営む焼き鳥屋さんで絶品焼き鳥を堪能。
連休、濃い。


8/14(金)
朝から水回りの掃除。雨水や台所排水など屋外の枡まで完璧に仕上げた。そののち洗車、ウェットスーツを洗うなど。
夜は地元の先輩たちと会食。二次会はジンくんが営むBar Kongへ。ただひたすら楽しい夜。毎回毎回こんなに楽しくていいのか。
ところでジンくんは、インスタのストーリーズで「ゴリラの一言」というのをアップしていて、私はこのシリーズの大ファンである。いくつかピックアップしてみる。
「誰かに醤油を“ちょっとだけかけて”と頼んだ時、だいたい少し足りない」
「お米売り場に行ったらとりあえずチョップする」
「スーパーの入口で知り合いに会い、しっかりめに立ち話したのに中の通路でもう一度会う」
ジンくんは天才。


8/15(土)
8時に起きて読書。そののち『Tシャツが乾くまで』の6話を観た。
最近読んでいる司馬遼太郎の『世に棲む日日』には、作家の国木田独歩が登場する。国木田が長州藩士の富永有隣をモデルとして短編小説を書いた旨が同作の中で紹介されているのだ。その国木田独歩の孫の孫が『Tシャツが乾くまで』で園田樹生を演じる中島歩である。なんというか、今朝、私ひとりで時空を超えた。
夜は「あしだ川花火大会」へ。シークレットスポットから完璧な距離と角度で花火を観覧。西日本最大級の花火大会は今年も圧巻のフィナーレで幕を閉じた。しかし私の連休はまだ終わらない。今日まで8日間、この上なく濃密に遊んだというのに、それでもまだ明日も休みなのである。笑いが止まらんわ!ヌハハハハ!


8/16(日)
窓の向こうは漆黒の闇。何も見えない。
しかし私にはわかる。奴はもうそこまで来ている。
もう何もかも終わりだ。


8/17(月)
朝、玄関のドアを開けて空を見上げた時、VIVANTが始まる時の「カァ~ア~」みたいな声が聞こえた。他の記憶はない。


8/18(火)
ソファーでウトウトしていたら、少し離れたところに長女が立っていた。「どしたん?」と聞くと、クスクス笑いながら「自分のオナラで起きたね」と言われて目が覚めた。どこからが現実なのかわからない。


8/19(水)
最高気温35度。朝のラジオでフジファブリックが流れていたが、まだまだ真夏のピークが去る気配はない。
福山駅でジムの常連さんとバッタリ会った。これから仲間と走ると言う。数人で集まって一緒に5キロほど走るそうだ。あれか。インスタでよく見るやつか。ランニングコミュニティというやつか。自撮り棒を持って走るやつか。コミュニティすな。自撮り棒すな。


8/20(木)
昼、テレビを点けると甲子園の準決勝をやっていた。甲子園のサイレンを聞くと、安住さんのラジオに寄せられた投稿を思い出す。とある女性リスナーが甲子園のサイレンについて「この声ほんとすごいよね」と言って友達に驚かれたというもの。リスナーはあのサイレンを、ウグイス嬢が鬼の形相で力をこめて「アアアアアー!」と発声していると思っていたのだ。小さな頃からウグイス嬢に憧れていたリスナーは、お風呂でいつも「アアアアアー!」と発声練習していたという。そして(毎回同じように言うのは難しいから、うまくできたのを録音して流しているんだ)と信じていたそうだ。この話を聞いた時は腹が攣った。


8/21(金)
仕事帰りにBEFORE DAWN拝聴。燃え殻さんのお祖母さんとのエピソードに不覚にも泣いてしまった。BEFORE DAWNは、文学と音楽のちょうど真ん中あたりを流れている。
家に帰ると女子バレー日本VS香港。例によって奥さんがテレビの前で観戦。しかしいつものように「やったー!」とか「いけーっ!!」という歓声が聞こえない。「どしたん?今日えらい静かじゃん」と言うと「今日は声出さんでも勝てるわ」とのこと。立ち位置。


8/22(土)
世間は休日だが私は出勤。最高裁まで行く。
仕事終わりにスイム2kmで追い込み、図書館に寄って帰る。カラカラになった身体にキムチ鍋で栄養を補給。TVerで『Tシャツが乾くまで』の7話を見る。先に見ていた奥さんから「“ほほーん!”ってなるよ」と言われていたが、実際に見終わった後で“ほほーん!”となった。夫婦で語彙力。
Yahooニュースに「高市総理 9月に内閣改造人事」とある。スーツを新調しておく。


8/23(日)
早朝から水回りの掃除に勤しむ。聴き貯めていたラジオを楽しみつつ奮闘。今日は水垢や石鹸カスがターゲットだったので大量のクエン酸を使用。ちなみに、クエン酸は食える。
昼から家族全員で外出。次女を塾に送って、終わるまでの時間で近所のショッピングモールへ。先月Rizinに出場した信ちゃん家族とバッタリ会う。試合で負った左膝の怪我が今も深刻そうであった。1ヶ月前の勇姿を思い出し、また勇気をもらった。
夕方、次女をピックアップして洋食屋「ボントレ」で晩飯。旨し。


8/24(月)
この前の月曜日からまだ1週間しか経っていないのに、また月曜日がやってきた。あまりにも不公平ではないか。
そして暑い。最高気温37度。気温30度以上は法律で禁止すべきである。
田中泰延さんの街角diaryがすごい。昭和の大阪。熱気と混沌。私は『日本三文オペラ』や『血と骨』の、あの生々しさを想起した。80年代、微かに残ったあの生々しさを、無垢な少年の視点で捉えた一編。たまらん。タイトルは「あの日の夏」。「あの夏の日」ではなく「あの日の夏」なのである。


8/25(火)
テレビは一定間隔でCMが流れると分かっている。新聞や雑誌にはところどころに広告スペースがあると分かっている。チラシはそれ自体が広告だと分かっている。しかしWEB広告だけはいつどこで表示されるか分からない。さっきYahooの記事を読もうとタップしたら、記事の上に覆い被さるように「ヒゲ脱毛★3ヶ月で髭とおさらば★」と表示された。私はWEB広告とおさらばしたい。広告が舌打ちのキッカケになってどうする。


8/26(水)
アップルウォッチの寿命が来ている。朝7時に充電100%の状態で身につけて9時の段階で40%。昼前には充電が切れた。購入から5年半。買い替え時かとネットで候補をピックアップしてレビューを見ると、星5つのコメントが「発送スピード、梱包の丁寧さなど、大変満足しております!使用するのが楽しみです!」まず使え。


8/27(木)
夕方のテレビで「AIに使われる人」の特集をやっていた。ある人はChatGPTに「〇〇について聞きたいのですが、どのように聞いたらいいですか?」と問いかけるという。「ビジネスで今すぐ使える!生成AIプロンプト集」みたいな本も持っていて、とにかくAIを使いこなそうと必死なのである。考えない人の考えなさ。逆ロダン。AIもAIで、そういう時は「しらん。飯食って屁こいて寝ろ」などと答えればいいのである。


8/28(金)
鳥貴族で宴。食べ飲み放題3,900円という意味の分からないコースで大いに盛り上がる。レシートを確認すると5人で食べ物40品、飲み物30品。会計は19,500円。いくらなんでも安すぎるのではないか。
2軒目で歌が上手すぎる女性2人組と数ヶ月ぶりにバッタリ。ひたすら聴き入る。
楽しすぎてあっという間に0時を越え、1時過ぎに帰宅。眠し。


8/29(土)
7時起床。朝食後すぐに、昨夜放送分の『Tシャツが乾くまで』を見る。ちょっと、もしかしたら、第8話でTシャツ乾いたかもしれない。
昼過ぎに家を出て鳥取へ。道中BEFORE DAWNと志ん朝名演集を聴く。16時に着いて19時まで、中部のビーチで夕波を貪った。寝不足のせいか凡ミスも多く、いまひとつ調子の出ないラウンドであった。やはり私は7時間以上の睡眠が必要。
というわけでこれから4時半まで、昨日の不足分もカバーすべく9時間眠る。夜の海辺は秋の気配。蚊もいない。ハッチを半開きにしていると、時折ひんやりした風が吹き抜ける。鈴虫たちが嬉しそうに鳴いている。ちょっとうるさい。


8/30(日)
4時半起床。お気に入りのリーフポイントで6時入水。セット間長めの緩い波を仲間と3人でシェア。2時間ほど経った頃、急に沖が見えなくなるほどの大雨に見舞われて仕方なく上がる。
雨雲が通り過ぎるまで1時間ほど待機して、近くのビーチで1ラウンド。昼過ぎに風が入って終了。コンディションの割には楽しめたのでヨシ、と帰路につく。途中、道端に野生の猿がいた。写真を撮ろうと窓を開けると、ものすごい速さで木を登ってどこかへ行った。まるで野生の猿のような動きであった。
明日は金曜日か。うれしい。


8/31(月)
奥さんがキャーキャーと歓声を上げている。テレビでバスケ日本代表の試合をやっているのだ。奥さんは河村勇輝の大ファン。河村選手のノールックパスが通るたびに「かっこいい~!」と黄色い声援を上げている。人間の耳で聞き取れる周波数の最高音域に近い。「ジョングクと河村どっちが好きなん?」と聞くと「ちょっとグク」と言う。「じゃあ俺とグ」まで言ったところで「グク」と即答。最後まで言わなくても意思疎通ができる。これが夫婦の絆である。
って今日の日記に書こうと思うけどどうかな?と声をかけているが、今は河村選手に夢中で何も聞こえない様子である。


8月が終わった。

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  • 唐木俊介 エッセイ


    1980年生まれ 会社員