とある編集者の準備術
こんにちは、こんばんは、おはようございます。
水曜の「街角diary」担当の廣瀬翼です。
今週はラジオ大阪で「田中泰延のシャチョーとシュチョー」が毎日15:40頃〜放送されています!
今回の社長は、大阪市でゴミ回収・処理・リサイクルを行なっている、合同衛生株式会社の林博之社長。
毎回、Twitterでもポイントをまとめてツリー形式で投稿しているので、エリア外の方もぜひご覧ください。
そして今、私は次の収録のための「用意」をしています。
「田中泰延のシャチョーとシュチョー」の事前資料集めと構成のたたき台を用意しておりまして、この番組は「出演・プロデューサー:田中泰延、リサーチ・構成:廣瀬翼、マネジメント:加納穂乃香」で準備を進めるイメージ。
で、ですよ。『読みたいことを、書けばいい。』の著者で、『伝えるための準備学』を出している出版社の代表である田中泰延が、世の社長に話を聞く番組なわけですから……
リサーチ、結構時間を使っております!
とはいえ、「押さえるツボ」はあります。
これが、他のお仕事でもインタビューする時などに横展開できそうなので、今日は「どんなところを構成を考える前段階で調べているのか」を書いていきます。しゃちょうに怒られそうな情報量の有料級仕事術です。
1:インタビューする企業の公式Webサイト
これは当然、みんな最初に見るでしょう。
私はだいたい、サイト内をこんな順番で見ていきます。
- トップページ
- About
- 会社概要
- 事業紹介
- 事例紹介やブログ欄(会社公式noteのことも)
- ニュース欄(メディア掲載のお知らせなど / 会社公式SNSがこの代わりのこともあり)
大きなところから会社全体をつかみ、規模や何年から活動しているのかなどを会社概要で見てから、主な事業について調べるという感じ。
事例紹介やブログ欄は全部を見るというよりも、ざっと目を通すようにしています。
傾向として、「5」「6」が多いところは外部のメディアでの取り上げも多いです。ありがたいことですが……実は、参考にできる情報が多いから安心、というわけでもありません。
むしろ
「多すぎる情報をどう整理するか?」
「どこまで調べるか、追うか?(時間は有限)」
「他のメディアでも上がっているけれど、今回も絶対に入れ込むべきことは何か?」
「他の記事と今回の企画の違うところは何か?」
「既出だけど、あんまり知られてなさそうな、これを差し込んだら相手が喜んだり驚いたりしそうな情報は?」
「最新の情報、今この人たちが一番メッセージングしたいことは何になっていそうか?」
と、検討することが増えるとも言えます。
とはいえ、ただとにかく情報をたくさん入れる段階と、上記のようなポイントを念頭に置いて探す段階は、切り替わりは感覚といいますか、グラデーション。
まずは、「仮説を持たず概要を自分に落とし込む」姿勢から調べ始めましょう。
2:会社に関するメディア記事(新聞、Webメディア、Web上で読める雑誌)
「会社名」でグーグル検索。少なくとも5ページ目くらいまでは見ます。
そうすると、その会社の「最近の活動」「ニュースバリューとなるポイント(=いま、世間から注目されているポイント)」「長く厚く読まれている落としてはいけないポイント」の3つが見えてきます。
また、「会社名+プレスリリース」「会社名+PR TIMES」もチェックしています。
当たった記事は基本的にすべてプリントアウト(会社の新サービスなどに関する最新ニュースは複数メディアで同じニュースを出していることがあるので、最も信頼できるメディアのものと、最も詳しいものを印刷)。改めて蛍光ペンを引きながら、紙面上で読み込みます。
それから、レポートなどでは「ダメ」と言われるwikipediaですが、インタビューの場合は話の入口になったりすることもあり、逆に目を通しておくほうがいい場合も。「wikipediaだとこう書かれていますが」というのが、「そうなんです(笑)。あれ、誰が書いたんだろう」と、ほぐれた会話につながることもあります。
3:社長が取材を受けているメディア記事(新聞、Webメディア、Web上で読める雑誌)
次に、「社長の名前」「会社名+社長の名前」で検索。企業名のときと同じく、5ページ目くらいまでは少なくともチェックします。
こちらは「社長のキャリア」「会社や事業のストーリー」「その会社が目指すもの、ビジョン・ミッション」「社長の人柄」「会社の風土」「話をドライブさせられるポイント情報」が見えてきます。
特に、新聞メディアの長めの記事、Forbesや日経系などビジネス系メディア、『社長名鑑』など経営者インタビューに特化したメディアは要チェック。名前の検索だけだと足りなく感じる時は、そういったメディア名もつけて検索しています。また、企業サイトの「メディア掲載情報」でここ半年くらいで紹介されていた記事は必読。
一番時間も資料の量もボリュームを割くのは、このインタビュー記事まわりです。
直近1〜2年の記事はもちろんですが、かなり以前のもの、例えば起業当初とか、その会社が大きな転換期を迎えた時期に公開されていたものなどもできる限り探してきましょう。
そうすると、「時間を経て社長の中で何かがかわったとき」「反対に、確固たるものになっていったこと」が見えてきます。
また、社長インタビューって3記事くらい読んでいると「同じこと繰り返してるな……」となるのですが、そう感じても全部読みましょう。
同じエピソードやメッセージでも、記事によって言い回しやどういう文脈で出してくるかが少しずつ違います。それに触れることで、平面ではなく立体的につかむことができるようになります。
ここを「同じこと言っているし」と1つのチェックだけの“平面的理解”でスルーしてしまうと、いざインタビューで質問した時に思った回答が返ってこなかったら焦っちゃうんですよね。
記事は、ライターや編集者の“無意識の判断・価値観”が介在しています。どんなに誠実に書かれた記事であっても。いわゆる“2次情報”です。その理解の精度を上げるのは、できるだけたくさんの角度から触れてみるという、ボリュームだけ。だから、1つの記事だけを信じすぎてはいけないのです。
社長インタビューの記事も、当たったものは基本的にすべてプリントアウト。改めて蛍光ペンを引きながら、紙面上で読み込みます。
余談ですが、メディアのみなさん。プリントアウトしようとしたりスクリーンショット取ろうとしたら全画面のポップアップ広告が出てきて一生記事をプリントアウトできないやつ、お願いだからやめてください……。いい記事だったのに、そのメディアのこと信頼できなくなっちゃうよ……。
【コラム】AIで検索しない理由
「2」と「3」について、「AIに聞いていくつか記事出してもらったら早いんじゃない?」と考える人もいると思います。ただ、「本人にインタビューするための準備」としては、私はそれは反対派です。
理由は4つ。
自分で検索せずAIが出してくれたものを読むだけだと、『伝えるための準備学』でいうところの「澱」にまでなってくれないというのが1点目。
集めてくる記事のクオリティの疑問というのが、2点目。どれが最新情報なのか、なぜその記事をピックしてきたのかが不明瞭だと、扱いにくいです(プロンプトの精度によっても異なるかもしれませんが)。
また、ボリュームが足りないというのも、あります。単純に「何記事引っ張ってきて〜」という話ではなく。どれぐらいメディアに取り上げられている人なんだろう? も、自身で検索してページをめくることで知れる重要な“情報”です。
そして4つ目が、情報の深度。つまり、AIにポンと聞いて出てくるような記事って、インタビュー相手からとっても「読んでいて当たり前」の記事なんですよ。
グーグル検索の5ページ目までは見る、というのもこれが理由。1ページ目にヒットする情報は「見ていて当たり前」、2〜3ページ目くらいは「あら、ちょっとはちゃんと調べてきたのね」レベル。それが5ページ目あたりまで目を通していると「よく調べてきてくれて……!」となる。それも、自分の目で見て「この情報はちょっと深そう」というのが、検索ページを手繰っていく中で感じられる。これが、私にとっては重要な感覚なのです。
4:採用ページ・採用サイト
見落とされがちですが、これはかなり大切!
特にベンチャー企業や、一定以上の規模になった会社は、採用コンテンツに力を入れているところが多いです。企業や社長の考えていること、文化・人柄が現れるところ。ビジョン・ミッションも、より噛み砕いた言葉で詳しく説明されていることがよくあります。
たとえば、1月に出演いただいたほぼ日さん。「いい人募集。」についてをトピックに上げました。
過去の採用ページですが、2度も「いい人募集。」で打ち出している。その「いい人」というキーワードから、ほぼ日が考える・求める「人」、ほぼ日の“乗組員”はどんな人たちなのかを伺いました。
また、採用コンテンツは「想い」の部分だけでなく、「ジョブディスクリプション(勤務形態や応募要件)」も、情報の宝庫。そこを見ることによって、その会社の事業における「実際にやっているお仕事」の解像度が上がりますし、働きやすさや企業の規模、組織風土も見えてきます。
5:社長が出演しているテレビ・YouTube
テレビでの取り上げも、一部がYouTubeに上がっていることがあります。特にそれは要チェック。
テレビで取材・紹介されているときって、社会的文脈・周辺情報、なぜ注目なれているのか、あるいは普通の取材ではなかなか入れない現場や裏側を取り上げてくれる場合が多いので、貴重です。
イベント登壇などのYouTubeも貴重ですが、こちらは1本1時間などかなり時間を取られます。なので、複数ある場合は最新のものやTEDのような超有名どころ、新聞系メディアや対談相手が注目なものなどに絞って1.5〜2倍速で見ています。本当は、ちゃんと1倍速で全部を見るのが理想なんですけども……時間は有限ですから。
この「何を見るか」を判断するために、先に「2」「3」を済ませておくことが重要です。そうすれば、「今回のインタビューの目的で考えたら、どこを見ておくべきか」の勘所がつかめるようになっています。
また、私の「用意」はこのあと情報を泰延さんに渡すことが前提です。
文字って、情報収集としてはすごく効率的なんですよ。自分のペースで飛ばすこともできる。でも、動画は時間も集中もすべてを拘束されてしまいます。
この動画は他の記事で担保できるのか、あるいは一部を文字にして渡してあげればいいか、何分のところだけ見てくださいとするのがいいか、いやいやこの動画はやっぱり全編見ねばと伝えるのか。
動画にはそういったことも考えながら当たるため、先に文字情報を集めておくことが欠かせません。
6:社長が出演しているラジオ・Podcast
ラジオ・Podcastは倍速せず、そのままの速度で聴きます。
理由は「人柄」「コミュニケーションのスタイル」が見えるから。
どんな声なのか、会話のテンポ感、声のトーン、どんな時に反応が大きくなるのか、よく口にしている言葉。それらを感じることで、実際のインタビューのイメージやこちらの心持ちも想像しやすくなります。
トークの内容はできれば書き起こした文字(AIで起こせる環境であれば)をプリントアウトし、文字で目を通すようにしていますが、音源をAI書き起こしにかけられなかったり、ページが増えすぎたりすることもあるので、それは“できれば”にしています。
【コラム】AI書き起こしがなかった時代
今では当たり前にAI書き起こしを活用していますが、それ以前はどうしていたか。
もちろん、自分の耳で聞いてタイピングし打ち込む方法もあるのですが、もう一つよくやっていた書き起こし方法があります。
「音声入力」です。
10年ほど前、Googleドキュメントへの音声入力がそこそこ精度の高いものとして使えるようになってきた頃に使っていた方法です。ただし、音源をスピーカーに向けて聞かせて書き起こす、だとうまくいきません。
で、やっていたのが「シャドーウィングのように自分でイヤホンマイクに吹き込んでいく」でした。
これ、なかなかアリですよ。自分の中をしっかり情報が通ってくれるので、理解度が高まります。
問題があるとすれば……オフィスでブツブツ言ってる人にはなりたくないから、一人のときじゃないとできないことかなぁ。
7:社長の著書
本が「7」であることに、意外と遅いと感じる方もいるかもしれません。
本を出している方は絶対に読むべきなのですが、入手するまでに時間がかかることがあります(中古または図書館のみになってしまっている本だと、収録までに手にするのが難しいことも残念ながらあります)。また、読み切るのに時間がかかるものでもあります。
だからこそ、会社の概要や取り組み、社長のストーリー、強くメッセージしたいこと、人柄といったポイントをここまでのリサーチの過程で把握してから開く。そうすると、どこを押さえて読むべきかも分かりやすくなり、読むスピードも理解度も上がります。
出版数が多くてどう頑張っても時間内に全部は読みきれない場合は、以下の3冊を押さえましょう。
- その人が初めて出した本
- その人が「名刺がわり」にしている本
(たいていの場合「最も部数が多い本」) - その人の最新刊
また、読み方もコツがあります。以前、書店員さんに教えていただいた読み方です。
- 「はじめに」を読む
- 「おわりに」を読む
- 「目次」を見る
その上で、特に書き手の思い入れが強そうな部分や、今回の取材のコアに関わってくる部分を中心的に読む。
ただし、この読み方は本を「資料」として、アウトプットの目的を持って見るときの方法です。ビジネス書、実用書などには適していますが、小説形式のものなど適さない本もあります。また、純粋に本を楽しむ時は、やっぱり前から順番に丁寧に読んでいくのがいいなぁ、と思います。
8:社長のブログやnote
出している方の場合はチェックしましょう。
記事数が多い場合は、代表的な記事(noteだと「いいね」が一番多い記事)、タイトルから起業ストーリーや自社の事業について書いてあることが読み取れる記事、最新の記事にあたれれば◎。
9:実際の商品やお店
できるだけ実際に入手して触ってみる。お店には行ってみる。時間や予算で難しい場合もありますが、可能な限り取り組んでいます。
特に食べ物は、第一回にお越しいただいた株式会社グルメ杵屋の回も、2月に出演いただいたお好み焼きの株式会社ゆかりの回も、泰延さんと前日にお店に食べに行きました。

これが、今回紹介している「用意」で唯一と言っていい、当たれる“一次情報”となります。
10:社長以外のスタッフが出ている記事やメディア
これはある場合とない場合があります。でも、ここまで調べてきた上でもう一度キーワードを変えたりして検索したら、一つくらいは出会えることが多いです。
スタッフが話していて、企業公式の発信や社長の話と一貫していることは、その企業のDNAでありブランド。また、スタッフの声から現場について知ること、想像の解像度を上げることもできます。
11:検索窓に出てくる予測キーワード
企業名や社長の名前を検索窓に入れると、予測のキーワードがいくつか出てきます。これも、押さえておきたいところ。できればそのキーワードの組み合わせで結果に表示される記事もいくつか見てみましょう。
それが「世間からこう見えている」「世間はここを疑問に思っている」という情報になります。
それが、構成をつくるにあたっての仮説や質問のもとにつながることがあります。
12:業界や取り組んでいる課題に関する社会全体の情報、周辺情報
ここをどこまで深掘れるか……は、時間との勝負です。かなり頑張ってあたってみたけれど、結局使わなかったということが多いのも、ここ。だけど、理解を深めたり、芯食った話に踏み込んだり、これから目指すことの話をより具体的に聞くために必要なポイントでもあります。
例えば、12月にお越しいただいた、外国人の留学生やキャリアの支援に取り組む森興産株式会社。

この時は、外国人留学生の数の推移や、留学等の行き先の国としての人気ランキングなどを調べました。
さまざまな機関の統計調査などの報告資料がインターネット上にPDFで公開されているので、そこから紐解きます。ここは、かなりAIが活用できるポイント。さらに、海外からはどうみられているのか、海外の場合の取り組みはどうかなども、AIを活用すると英語記事を引いてきてもらえるので、重宝しています。
また、1月にお越しいただいた株式会社wagamama(近日、記事・動画公開予定!)。この時は、女性アスリートが月経について対談している記事や、アスリートのセカンドキャリアについての調査にも当たりました。
13:SNS(社長のもの、企業のもの)
うちは「Twitterの田中泰延」なので、Twitterのチェックは実はもっと上位でマストなのですが、雑多なメディアでもあるので、一般的には最後や空き時間であたってみるのでいいかなと思っています。
また、個人の場合はSNSもそのプラットフォームにより見えてくる情報が変わってきます。あくまで傾向ですが……
● Facebook:個人プレスリリース
→その人が外向けに発信したい、言いたいことが載っている
● Instagram:オフの姿
→趣味、好きなもの、プライベート
● Twitter(X):頭の中
→その人が今、社会に対してどんな関心を抱いているか
→その人の活動等の速報
リサーチ段階で一度目を通してみたうえで、特にTwitterは当日や前日夜に開いてみるのがおすすめです。そこで得た情報が、インタビュー前の挨拶で「いいお天気ですね」の代わりに生きてくれることが多々あります。
【コラム】Twitterから広がった話題
大学時代、ある農業系の企業の社長にお話を伺ったときのことです。
その方は、毎日その日食べた朝ごはんをTwitterにアップされていました。
そこで、当日も取材前にその日の朝ごはんをチェック。「今日も美味しそうでした、もう〇〇(なんの野菜かは忘れてしまったのですが、菜の花だったかな……)の旬なんですね!」とお話ししてみました。
そうしたら、ちょっと照れた様子を見せながら、「今年のは特に美味しいですよ」とうれしそうに語ってくださいました。
そこから好きな食べ物や、なぜ朝ごはんをアップするのか、食事や食材への思いや姿勢、朝ごはんを食べない人が増えていることについて……と話が広がり、取材においても大切なコアの話にもつながっていきました。
きっと、ただ真っ向勝負で「食事はどう大切だと思いますか!」なんて聞いたら出てこなかった話もあるんじゃないかな。柔らかくほぐしながら聞きたいことへの道をつくってくれる、その糸口がSNSにはあるように思います。
用意を「捨てる」
ここまで集めた情報から、ポイントを抽出して構成をつくっていきます。
どれぐらい時間があるかにもよりますが、ここで手書きを一度挟むことが私は多いです。
手元にキーワードを書き出してぐるぐる円を書いたり、線をつないだり、自分の理解が深まるまで裏紙の上にひたすら何かを書きなぐることもあります。箇条書きの構成を手で並べてみて、それを赤字で入れ替えたりということもあります。
そこで論を整理してから、wordの箇条書きの構成にに落とし込んでいきます。
この段階で、廣瀬のフィルターで一部の用意が捨てられている状態になります。
ですが、「田中泰延のシャチョーとシュチョー」の場合のように泰延さんへ渡す情報・構成の準備のときは、できるだけ私個人の視点や意思を介在させずに、情報と事実を論で組んでいくことを意識しています。「勝手な判断をしない」というのも、一つの判断です。
そのため、私から泰延さんに渡る構成案は、1回10分の番組なのに、「普通の人がこれを全部押さえたら、15〜20分インタビューにかかりそうだなぁ」という情報量。その情報量でもパッと見て構造がわかるよう、箇条書きを多用しています。
また、構成と合わせて、ここまでの用意で印刷してきた記事も、廣瀬の蛍光ペンが入っている状態ですべて泰延さんにお渡しします。蛍光ペンが入っていることで、ポイントを押さえて読めるだけでなく、「なぜこの構成にその情報が差し込まれているのか」という廣瀬の頭の中が見えやすくなります(ただ、蛍光ペンの有無はこれは受ける人の好みにもよる)。
だけど、記事自体は絞らず、すべて渡す。これを大切にしています。
先日、このプリントアウトがどれぐらいの厚みあるのか、定規で測ってみたら……1.5〜2cmありました。
情報は足りないよりは多すぎるほうがいい。捨てることはできても、ない情報をつくることはできないから。
そして、この形式で組めているのは、泰延さんが「その場の相手に合わせてしっかり捨てる、切り替える、入れ替える、をしてくれる人」だから。最後の「用意を捨てるという準備」を泰延さんが担ってくださるわけです。
これが本当に、難しいのよ〜……!
テキストの記事がアウトプット先の時は、多少インタビューがもたついても、時間をおいて第三者的視点で削ったり入れ替えたりはできるものです(それも思い入れがあるとなかなか厳しい作業ですが)。
でも、泰延さんがしているラジオの収録というのは、インタビュー=アウトプットに直結しちゃうんです。
人に渡しておいてですけど、私は自分がつくっている情報モリモリの構成だと、できません(笑)。
もしかしたら、「田中泰延のシャチョーとシュチョー」の場合は、泰延さんに対しては私なんぞが情報の優越をつけずに渡せるだけ渡したほうがいいということを理解する。そのつもりでモリモリに渡しているという認識をそろえる。その信頼関係をつくってきたことが、1番の“準備”かもしれません。
* * *
一次資料が大切だと常々いう田中泰延ですが、インタビューの場合は最大の一次資料がご本人。だから、「仮説を持って一次資料にあたれる状態をつくる」ための情報収集・用意の仕方が、ここまで書いてきたことだと思ってください。
また、書籍と実際の商品以外の部分は、すべて「無料でできる範囲」だけを紹介しました。それだけでも、これだけ当たるべき情報リソースや角度があるわけです。
というのを、書き出して公開して、今日伝えたかったことは2つ。
① みんな、シャチョーとシュチョー聴いて〜! 読んで〜! 見て〜!

それもね、3日目・4日目・5日目まで見てほしいのです。
わかる、1日目だけで続きは積読状態になっちゃうのも、わかる。長いもんね。
でも、やっぱり1日目って「概要紹介」が中心でして……本当の意味でこの事前の用意が生きてくるのは、3日目・4日目・5日目なのです。踏み込んだ話をして、他のメディアではまだ出ていない生の声が聴けて、社長の話が私たちの日常や社会とつながって身近になったり、その社会的意義が見えたり……そういうのは、3日目以降が多いのです。
ぜひ、最後までチェックしてみてもらえると、うれしいです!
② 世のライターのみんな、これくらいは調べてインタビューに臨もう!
じゃないと、AIに取られるよ、私たちの仕事。
実際にAIのアウトプットのクオリティが高いか低いかじゃないんです。
世の中に「AIでいいじゃん」という空気が流れていること、「自分でもできるんじゃない」と思う人が増えることが脅威なのです。
だって、そうなったらライティングの依頼の総量が少なくなる。依頼をもらえる場合も、AIで簡略化できるでしょと予算が小さくなり単価が低くなる可能性があります。そうしたら、生き残れるのはすでに信用を築いているポジションのある超トップの一部のライターだけになるでしょう。
AIなんてここまでしかできないと比較したり、AIだけで済ませたものを世に出すなんてという理想・精神論を掲げても、意味はないと私は思っています。どう足掻こうが、AIの活用が加速していくのは、もう見えきった未来だろうから。
AIでは詰めが甘いことも理解した上で、淡々と言った通りのことをやってくれて、気を使わずにガシガシと修正できるAIのほうが人に頼むよりも気が楽でいい、という人だって出てきます。自身もライターである私が、編集としてそう思うこともあるくらいです。
そんな今、私たちライターがやるべきなのは、「やっぱり人が書くといいな」と思ってもらえる圧倒的なクオリティをすべての記事で出していくことだと私は思っています。
そして、そのクオリティは、土台に圧倒的な用意・準備、そして直接的な情報以外へのアプローチがないと生まれない。用意・準備がないものはただのひとりよがりになってしまう。私しか引き出せない視点で伝えるどうこう、ふわっとしていることを言っている場合じゃないよ。
そんな危機感と、いろんな可能性へのワクワクのどちらをも抱きながら、AIの最新ニュースを見る今日この頃です。
いつの日か。多角的に調べてジャンプしたところの話を引いてくることまで、AIができるようになってしまう時がくるかもしれない。それでも、調べすぎるくらいに調べて論を組み上げて仮説を立てて……の思考回路が身についていれば、それは他のことにも活かせて何かしら生きる道が必ずあると、思っています。
生き延びるぞ、ライターのみんな!
廣瀬 翼
レポート / インタビュー
1992年生まれ、大阪出身。編集・ライター。学生時代にベトナムで日本語の先生を経験。食物アレルギー対応旅行の運営を経て、編集・ライターとなる。『全部を賭けない恋がはじまれば』が初の書籍編集。以降、ひろのぶと株式会社の書籍を担当。好きな本は『西の魔女が死んだ』(梨木香歩・著、新潮文庫)、好きな映画は『日日是好日』『プラダを着た悪魔』。忘れられないステージはシルヴィ・ギエムの『ボレロ』。






