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あなたもわたしもプロ人間【連載】ひろのぶ雑記〈第十一回〉

田中泰延


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無職だからもはや私には関係ないのだが、世間ではゴールデンウィークである。


ゴールデンウィークなので書き出しも先週と同じにして手を抜いてみた。どうせ誰も読んでない。みな、レジャーだの旅行だのにうつつを抜かしているに違いない。


だいたい、なにが大型連休や。おれの連休は大型すぎる365連休や、と言ってみたいのだが、退職以来1日も休みなくちょこまかと雑文を書き続けているので会社員のときよりよほど忙しい。


ちなみに、さっき見たニュースでは、国内、海外を含めてこの大型連休に旅行に出かける人数は約2千万人だという。


すごい。なにがすごいか。どこへも行かない人が1億679万人もいることがである。総務省によると2016年末の日本の総人口は1億2千679万人であるから、実に85パーセントもの人がどこにも行かないのである。


85パーセント。視聴率でいうとすごいよ。それだけの人が家でごろごろしている可能性があるのだ。NHKはこのタイミングで紅白歌合戦をやれば往年の視聴率を取り戻せる。そんな、どこへも行かないか、もしくはいつも通り勤労している人に向けて書こう。遊んでいるやつは腹たつから読むな。あと、お金貸して。



ゴールデンウィークだからといって、どこへも行かないか、もしくはいつも通り勤労するといえば、広告代理店に勤めていた24年間は、まさしくそうだった。


代理業であるから、クライアント様が遊んでいる間に働くのが仕事なのである。「ゴールデンウィーク明けの月曜、朝9時にプレゼンしてください」というクライアント様の軽やかなセリフを、24年間で24回ほど聞いた。


あと、「お正月が明けて、仕事始め式の翌日の1月5日、朝9時にプレゼンしてください」というクライアント様の軽やかなセリフも、24年間で24回ほど聞いた。


いずれも「考える時間たくさんありますね」という素敵な笑顔つきだった。


まぁ、この辺の話は長くなるのでまたいずれ書こう。恨み節を書きたいわけではない。人は恨み節の話よりカツオ節の話をしたほうがよっぽど出汁が出るのだ。


ただ、私は24年間の電通での勤務の中で、40日間の入院を4回、している。


よく死ななかったと思いたい。この話こそ長くなる。いつか具体的に書きましょう。



しかし、私は、死なないためには、そのクライアント様からの命令を聞くべきだと考えていたし、死ぬ思いをして4回も入退院してでもまたその仕事にしがみついていたのは間違いない。広告のプロにならなくてはいけない、プロにならなければ食えなくなり、飢えて死ぬ、と考えていたのだ。


もちろん、どんな人でも、世の中に対して、なにかをするプロでなければ食えはしない。また、電通という会社の給料は非常に良かった。


だが、先日、ある学生さんからの質問に私はツイッターでこう答えた。



プロとは何か。食えることである。


ならば、いま立派に食えているあなたも、食えるどころか食事を制限すべきだと医者に言われている私も立派な人間のプロなのだ。


どんな人でも、世の中に対して、なにかをするプロであるから食えているのだ。いま私は広告のプロではなくなったが、なにかのプロのはずだから飢え死にはしていない。えーと、失業保険をもらいに行くプロなのかもしれないんですが。


だれもがプロ人間として胸を張り、休むときは休んで、遊ぶときは遊んで欲しい。そうして、いい笑顔で会いましょう。


では、みなさんよいゴールデンウィークを。おれは働きますけど。


ゴールデンウィークなので最後も先週と同じにして手を抜いてみました。

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  • 田中泰延 映画/本/クリエイティブ

    1969年大阪生まれ 広告代理店元店員 コピーライター/CMプランナー ひろのぶ党党首 ひろのぶと株式会社