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2026年4月17日「街角diary」加納穂乃香がお届けします。

加納穂乃香


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出刃包丁を片手に。

祖父が病院で亡くなった夜、祖母と母と私は家に帰って、「大変な1日やったなあ。じいちゃんいなくなってさみしいなあ。」などと、祖父の思い出をたくさん話した。

母が子供の時代は厳しい家だったそうで、曾祖父が怒って扇風機を土間に投げ、びっくりして祖母や母がシーンとしていると、土間に転げた扇風機の首振りだけが「カタ…カタ…」と響いて、それが笑えてしまって余計に怒られたという話も聞いた。

京都人である祖母や母がそういう話をすると、とたんにおもしろい。


たくさんの思い出を話していると、
2階の祖父の部屋あたりから「ドンドン」と音が聞こえた。人が歩くような音だった。

祖父はお酒をよく飲んだので、19時ころに寝ると23時頃に起きてトイレに行くのが習慣で、寝起きでおぼつかない足音がするとトイレに行くのだなと思っていた。

この日も「あ、じいちゃんトイレに起きてきはったわ」と祖母と母と笑っていたら、「違う、じいちゃん、死んでる!じゃあ、誰なん?!」と騒ぎになり、みんなで見に行くことになった。


まずは、1階の階段下から3人で「誰かいるんかー!怒らへんから降りてこい!」と口々に叫んだ。が、反応はない。

2階に上がってみようとなった時、母が「襲ってきよるかもわからんから包丁持ってきた!」と台所の出刃包丁を持ち出し、「おばあちゃんはこれ持ち」と、パンを切る用の長細くてギザギザの包丁を祖母に渡した。

さらに、叔父にも電話をつなぎ、万が一の時は警察に電話してと伝えて、スピーカーホンにしながら母が階段をあがった。後に祖母と私も続く。

慎重に別の部屋のドアを開け、トイレのドアを開け、刑事ドラマばりに「クリア!」と叫んで、祖父の部屋に来た。


いつ襲ってくるかわからない足音の相手に震えながら進んで、電気をつけると誰もいなかった。

「なんやー、誰もいーひんやん」

分かってたけど、ちょっと安心して笑いあった。


叔父との電話も切って1階に降りようとしたら、祖母が「じいちゃーん、そこにいるんかー、死んでしもてさみしいでー。もうちょっとでそっち行くからなー、天国で見ててやー」と祖父に話しかけだした。

右手にパン切り包丁を持って、じいちゃんがいるであろう空間にむけてペンライトのようにブンブン振って。

祖父の布団で丸まっていた老猫のCちゃんが危険を察知して「ニャー」と鳴いて逃げていった。


母も祖母も包丁をしまい、また皆で思い出話に浸った。


来月は、もう7回忌。そんなに経った。

祖母と母とはなんどもこの話をしているけど、やっぱりまた話すだろう。それすらも思い出になるんだろうな。

 

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    ひろのぶと株式会社 事務局長。パンチニードル職人。