キャンピングカーのことしか考えられない
5月11日、月曜日。
一連の連休が終わった。「一連の連休」などと書くと校閲さんから即指摘されるし、私が書いた本の原稿には校閲さんから「これはギャグですか?面白いですか?」と書かれていた。
とにかくゴールデンウイークは完全に終わったのである。日本は終了しました。
人によっては11連休でしたとか、極端な人では16連休だったとかまであった。
16連休ともなると、1ヶ月の過半数を占めている。休日が単独政権を樹立しているのである。どうやって社会復帰するつもりなのか。今この瞬間その人は何をしているのか。息はできているのか。
そんな私は、この連休、特にどこへも行かなかった。
その前のひと月ほど、東京千葉大阪を3往復、ハイエースを4千キロも運転する引っ越し将軍を務め上げ、さらに家族の運転手として壱岐へ行ったりしたので、身体を休めるためにアマプラやネトフリで少しだが20本ほど映画を観たりしていた。なぜ働いていないのに本が読めないのか。出版社とか大丈夫か。
*****
車の運転はしばらく勘弁してくれ気分の私だが、やっぱり自動車が好きなんである。好きなんだけどは星のフラメンコ。フラメンコといえばというふうに書き進むとこれは上田豪さんの世界であって、その方向に進むと大変なのでしない。
いま気になる自動車はキャンピングカーである。
といっても所有したことも運転したことも使用したこともない。全くわからない世界なのであるが、欲しくてしょうがない。
昔、ヨーロッパに何度か旅行したとき、どの観光地にも膨大な数のキャンピングカーが停まっているのを見かけた。

自分で撮った写真が見つからなかったので、ChatGPTに「ヨーロッパの観光地にたくさんのキャンピングカー」と雑にプロンプとったところ、ほぼ自分の記憶通りの光景が出てきたので、OpenAI社は私の頭の中をハッキングしているのは間違いないのであってくぁwせdrftgyふじこlp
懐かしいインターネッツのスラングを四半世紀ぶりくらいに聞いたが、要はそのとき、
「キャンピングカーっていいなぁ」
と思ったのである。自分の家から運転して、そのまま目的地へ行く、ホテルのチェックインもチェックアウトも関係なくどこでも寝られて、冷蔵庫があってキッチンがあって調理ができて、トイレとシャワーがあって…いやぁ、走る家じゃね?動く城じゃね?ハウルじゃね?木村拓哉じゃね?倍賞千恵子じゃね?TOKYOタクシーじゃね?と憧れ続けてきた。四半世紀くらい前からである。
しかし日本では、キャンピングカーの文化はそこまでは広まらなかった。理由はいろいろであろう。だが、あるきっかけで、2020年代、突然の大ブームがやってきたのである。そう、コロナ禍である。
日本RV協会(JRVA)の調査によると、2005年の約5万台から、2022年には145,000台になり、毎年約1万台ペースで増加を続けて2025年には173,000台となった。2030年までに30万台に達するという予測もある。
人と連れ立って出かけられない、公共交通機関にも乗りにくい、宿に泊まりにくい、というあのコロナの期間に、旅行だけでなく、災害時の避難場所やテレワークの拠点としても注目され、キャンピングカーの良さに日本人が気づいたわけだ。時代がやっと俺に追いついた。なのにまだキャンピングカーに乗ったことも買ったこともないので、時代が追いついた俺に俺が追いつきたい。
*****

どこでも寝られて、冷蔵庫があってキッチンがあって調理ができて、トイレとシャワーがあって…なキャンピングカーは、内装の写真を見るだけでちょっとワクワクする。
ゴールデンウイークはネトフリとアマプラで映画を観ていた時間以外はすべてキャンピングカーのYouTube動画を見ていた。あとは寝ていた。数百本は見たと思う。キャンピングカーのことならなんでも私に聞いてください。

まず、代表的なのが「キャブコン」である。これはトラックの運転席(キャブ)を残し、後部を「コン」したキャンピングカーである。「コン」とは、英語の「Conversion(コンバージョン=転換、改造)」で、つまりトラックの荷台部分に架装した居住空間に人が寝泊まりするやつね。
中が広く、キャンピングカーの代名詞的なタイプだ。トラックといっても、かつて4トントラックの運転手だった私にとっては、こんなん小型車と言っていい。トイレとシャワーが設置してある車両も多く、私もこういうのが欲しいです。

続いては「バンコン」だ。結婚が遅い人ではない。商用車であるバンの荷室をコンしたキャンピングカーだ。先月私が4千キロも運転したハイエースがベースになっているものが多い。
キャブコンに比べてコンパクトさ、運転のしやすさ、丈夫さが特長で、室内は広くはないが、それでも家庭用エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、キッチン、さらにはスペースを工夫してトイレやシャワーまで上手にレイアウトしているのもあって驚く。うーん、これでもええなぁ。

さらに、「軽キャン」というのが爆発的に売れている。文字通り軽自動車をキャンピングカーにしたもので、排気量たった660ccの小さな車体に、大人2人がしっかり寝れて、キッチンまであったりする。
まぁ、軽キャンだとトイレとシャワーの装備はスペース上無理なので、行く先々で公衆浴場やコインシャワーを利用して車に戻って寝る、というスタイルになるが、日本の場合、「温泉巡り」という大きな楽しみがある。家族全員ではなく、老後の夫婦2人旅とか、ソロキャンプ日本一周とかならこの軽キャンタイプが一番なのではないだろうか。
そもそもキャンピングカーのシャワーは給水、湯を沸かす、排水、掃除、湿気対策となかなか大変で、「あっても使わない」という人も多いのである。まさにYouTubeを見続けただけの耳年増な俺がここにいる。キャンピングカーのことならなんでも私に聞いてください。

究極のキャンピングカーといえば、ヨーロッパの高級タイプだ。写真のフィアットデュカトベースの「ROLLER TEAM ZEFIRO 285TL」は、なんと1,604.9万円だ。
私の財布をいまみたら、最後の小数点のところの0.9万円しか入ってなかった。それもさっき加納さんに先月の経費精算でもらったお金だ。
こういうヨーロッパのすごいやつは、内装も高級ホテルのようで、キャンピングカーというより「モーターホーム」と呼ぶのがふさわしい。0.9万円しか持ってない私に買えるわけないのだが、さきほど上に挙げたような日本製のキャンピングカーも、新車だと軽キャンでも4〜5百万円くらいから、キャブコンなら1千万円くらいが多い。
*****
そんな貧しみの深い私がまじで欲しいなあと思うのは、「アウトドアジュニア(Outdoor jr)」だ。

2000年代初頭にリーエキスポート社が製造していた国産コンパクトキャンピングカーで、現在では20年落ちの中古を探すしかないのだが、当時としては非常に先進的なモデルで、小さい車体に必要な装備が全部ある。


この旧車だがキャンピングカーの歴史に残る名車、ヤフオクを見ていたらタイミング良く、貴重な一台が出品されていた。
酔っ払いながらネットを見ていた私は、思わず200万円で入札してしまった。朝起きてビビった。
これ、落札してしまったらどうなるのか。家に届いてしまうのか。届いたところでどこに停めるのか。今ある車をどうするのか。そもそも200万円はどこにあるのか。やめてくれ〜助けてくれ〜と思っていたら

誰かが990円だけ多く入札して落札した。
なんやねん990円て。助かりました。
*****
とはいえ、我がキャンピングカー熱は冷めやらない。もうキャンピングカーのことしか考えられない。
6月6日(土)・7日(日)に神戸ポートアイランドで開かれる
「関西キャンピングカーフェスティバル」

にめっちゃ行こうと考えている。

興味ある人、一緒にいきません?
ではまた来週。
田中泰延
映画/本/クリエイティブ
1969年大阪生まれ。株式会社 電通でコピーライター/CMプランナーとして24年間勤務。2016年退職し「青年失業家」を自称し執筆活動を開始。2019年、文章術を解説する初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。16万部突破。2020年、印税2割スタート・最大5割の「累進印税™︎」を掲げる出版社 「ひろのぶと株式会社」 を創業。





