4/1(水)
朝起きると右目が重い。鏡を見ると瞼が少し腫れている。ものもらいである。ネットで「治療 最速」と検索すると「市販の目薬を3~4日使用し、改善しない場合は速やかに眼科を受診してください」と出た。どう考えても最初から眼科を受診すべきだ。
エイプリルフールという習慣はまだ存在するのだろうか。嘘のようなニュースばかり目にするのでもう何を聞いても驚かない。ネット上にはAIなのか本物なのか分からない動画が溢れている。先ほど数頭のヤギが崖から飛び降りて宙を舞う動画を見たが、まるでシャガールの絵である。
シャガールといえば20歳の時、オペラ座で氏の作品を観た時は驚いた。あの天井画を描けるとは。並大抵の身長ではない。
4/2(木)
「やっぱ塩顔がいいよね」と娘たちが話しあっているところに「パパみたいな?」と挟むと「いちばんちがう」と言われた。
「パパは何顔?」と聞くと
長女「しょうゆ」
次女「ソース」
妻「ソースマヨ」
長女「みそ」
次女「こうじ」
乾いた空に、桃色の月が満ちている。
4/3(金)
Youtubeで『僕たちは田中と上田と前田です』を視聴。今回も雑談スタイルの楽しすぎる2時間。この番組も今回で21回目になるという。毎回どのような展開になるか分からない。しかし始まる前から面白いことだけは分かっている。そんな番組なかなかない。今回は、前田将多さんがYouTube配信をされていることなど驚いたことも多かった。浦島太郎感が否めない。
ものもらいがさらに大きくなっている。対ドラゴ戦終盤のロッキーのようだ。もっと他のものをもらいたい。
4/4(土)
終日雨。ジム→図書館と回って帰ってきた。ものもらい悪化防止のため、ジムはウェイトのみ。ジムへ行ってプールで泳がなかったのは初めてだ。アプリを見ると、今のジムに通い始めたのは2023年の9月。今日までに通算413回通っている。1回行けば少なくとも1.5キロは泳ぐので、2年8ヶ月で412回×1.5km=618kmは泳いでいる。多いのか少ないのかわからない。
Netflixでドラマ『再会』を観始めた。面白い。『リブート』も『再会』も、最近のドラマは韓国ドラマに寄っている気がする。1シーズンが短いこともあってストーリーの粒度に違いはあるものの、そんな気がする。
4/5(日)
ものもらい治らず。これ以上細菌に感染したくないので波乗りを断念。朝から包丁研ぎとトイレ掃除に勤しむ。好きな2種目である。「刃先を鋭利に」「陶器を白く」と、ゴールがわかりやすい。どちらも最後に水を流して終わる、儀式としての流れも良い。そして終わってみると、研ぎ澄まされ、磨き上げられているのは我が精神なのである。大変よろしい。
T子さんの見舞いに行くと「船はちゃんと動きよる?」と聞かれた。T子さんはずっと、自分が大きな船に乗っていると思っている。
昨日観始めた『再会』を、先ほど観終えてしまった。
4/6(月)
ベッドをやめて床に布団を敷くスタイルに変えようかとネットで検索していると、あるサイトに「床に布団を敷いて寝る3つのメリット」とあり、一番上に「①ベッドから落ちる心配がない」と書かれていた。真面目にやってほしい。
4/7(火)
昼過ぎに保険会社から「⚪︎⚪︎のご確認をお願いします」というメールが来た。仕事から帰ると同じ保険会社から封筒が届いており「⚪︎⚪︎のご確認をお願いします」と書かれている。中には現行の契約やコース説明など、沢山書類が入っているが、要は昼に届いたメールと同じ内容である。こういうのはメールか書類のどちらかだけ送ってくれればいい。どうせ内容はお知らせのみであり、そうと分かれば書類はすぐに丸めて捨ててしまうのである。
4/8(水)
夕刻、遅めのウチヤマダフーヅ朝礼。私は、文章を読んでいて気になる表現があればノートに書き留めるようにしている。今日は「ウチヤマダ・硬さ・ガッチガチ/信玄餅」と書き留めた。
4/9(木)
ジムで泳いでいると隣のレーンでアクアビクスが始まった。毎週木曜日は19時からアクアビクス。プールの端2レーンを使って、インストラクターのリードに合わせて参加者が踊る。今日のBGM1曲目はAKB48の「真夏のSounds good!」であった。参加者の多くは高齢の男女。息継ぎで顔を上げるたびに、踊る彼らの後ろ姿が見える。アクアビクスの最中はプール全体が波立ち、流れが発生する。負荷が増した水の中を必死で泳いでいると、トライアスリートのIさんが同じレーンに入ってきた。1500mを止まらず泳ぎたいのでIさんに追いつかれるわけにはいかない。となるとIさんのペースで泳がなければならない。踊り狂う後ろ姿、水の抵抗、迫り来るIさん、真夏のSounds good!。まるでシャガールの絵である。
4/10(金)
「新入社員の退職続出/退職代行に依頼殺到」というニュースを見た。どうしても辞めたいなら自分で伝えろ。と、一人一人に言って回りたい。ちゃんと生きようぜ。
4/11(土)
夕波狙いで日本海へ。小波、強風。厳しいコンディションの中、ひたすらパドル。サイドオンのオフロードな波面滑走はまるで修行であった。日没を過ぎ、ウネリが見えなくなって海から上がると19時前。近くの温泉に浸かり、今夜は道の駅で車中泊である。
電気を消すと耳元で蚊が飛ぶような音が聞こえた。仕方なく寝袋から出て電気をつける。10分ほどでようやく虫を見つけて退治した。安心して寝袋に籠ると、少し経ってまたブーンと音が聞こえた。さっき退治したはずなのに、もう一匹いたのか…と、電気をつけて見回すと助手席の窓が半分空いていた。最高裁まで行く。
4/12(日)
5時起床。明るくなるのが早い。そして暖かい。コーヒーを淹れて波情報をチェック。近くのビーチに目星を付け、向かうとクリーンな海面に腹胸サイズの形良い波が押し寄せていた。即入水。休憩を挟みながら11時頃まで延々と波を貪る。
14時に帰宅。美容室へ行き、夜は実家で鍋。食後、2階の部屋を整理していると、私が小学生の時に使っていた宿題帳が出てきた。短歌を書いて提出しなさいという宿題に対して「いろいろと いろいろいろと いろいろと かんがえてるが むずかしいなあ」と書いて提出している。万葉集に載っていてもおかしくない。
4/13(月)
先週捨てた保険会社の書類、要るやつだった。
4/14(火)
固定資産税の払込用紙が届いた。封筒の、本来切手を貼るべきところに大きく一文字「税」と書かれている。やかましい。
固定資産税だけは払いたくない。家も土地も、私のものだ。
4/15(水)
平日で唯一、塾の送り迎えがない水曜日。仕事して、ジムから帰って19時半。摂り始めて1ヶ月になるクレアチンサプリに懐疑的になっており、ひたすらググる。出力が上がるのは良いが、パンプしなくてもいい。必要以上に身体が重くなるのは避けたい。私にとって「身体にいい」とは「サーフィンの調子がいい」ということなのである。
4/16(木)
アメリカのTIME誌で「世界で最も影響力のある100人」が発表された。今回は私の名前はなかった。
4/17(金)
先輩5人と会食@鳥貴族。うち4人とは定期的に会っているが、1人とは実に30年ぶりの再会。感慨深い。30年ぶりの再会をするためには、少なくとも30年以上生きなければならない。こういう時、大人になってよかったと思う。
二次会はBar Kongへ。30年近くお世話になっているジンくんのお店である。ジンくんのトークは有料級。1時過ぎまで終始抱腹絶倒であった。ここに書こうといくつかメモしたが、見返すとどれもネット上には載せられない内容ばかりだ。書けるのは豆知識一つくらい。「ヘリコプター」という言葉をどこで区切るかという話。私を含めその場の全員が「ヘリ」と「コプター」で区切ると思っていた。しかし正しくは「ヘリコ」と「プター」だそうだ。「ヘリコ」はギリシャ語で螺旋を意味し「プター」は翼を意味するという。他にも「クアラルンプール」は「クアラ」と「ルンプール」で分かれ「さだまさし」は「さだ」と「まさし」で分かれるという。思い込みは怖い。
4/18(土)
T子さんに会いに病院へ。入浴の後で少し疲れた様子であった。目を瞑ったまま、呼びかけても返事をしない。しかし手を取って「握ってみ」と声をかけると、強く握り返してきた。聞こえている。身体を動かせないからこそ、耳はよく聞こえている。そういうこともあるのかもしれない。ふと幸田文の『台所のおと』を思い出した。
夕食は庭でサムギョプサル。焼いた豚肉とキムチ、サニーレタス。至福。
そして台風4号のウネリを求め、21時に家を出て徳島までやってきた。良波を祈りつつ寝るとする。
4/19(日)
夜明けから徳島市内のビーチで入水。腹くらいの速めだったが切れ目を選べば2アクションは入るファンウェーブであった。
昼から南へ1時間ほどドライブ。日和佐某所のリーフで胸肩サイズのパーフェクト・ライトを堪能。今年に入って一番良い波だったかもしれない。日没間際まで入水し、気づけば海の中には私ひとりであった。何を言っても誰にも聞こえないと思い、ボードに跨ったまま「うんこ!」と言ってみた。自由とは、こういうことである。
明日は昼前から役所へ行くため有給を取っている。爆速で帰れば夜明けから1ラウンドは可能。というわけで今夜は日和佐の道の駅で車中泊である。
4/20(月)
夜明けに向かった目当てのポイントは潮回り悪く、波割れず。しかしそこから1kmほど離れたポイントには、分厚い大波がコンスタントに打ちつけていた。サーファーは2人。車を見るにヘビーローカルと思われたが、セットが来るたびに1本か2本、波が余っており、この状況なら迷惑はかけないだろうとパドルアウトした。
ピークに着くと、南端の巨岩からオーバーヘッドのロング・ロング・レフトが割れていた。1本目から過去最長のレフトを堪能し、私の興奮はピークに達した。遥か遠くから押し寄せる巨大なうねり、立ちはだかる断崖、波の炸裂と轟音。こんな世界があるのかと、私は何度も息を呑んだ。台風が抜けた後、この気圧配置、この波高と風向きで、しかも満潮から潮が引き始めたタイミング。数多の条件をクリアしなければ辿り着けない、近くて遠い場所であった。
昼前に帰って駅前で雑用をこなし、夜は奥さんと18回目の結婚記念日を祝う。といっても「結婚18年だな」「そうね」「17年?18年?」「18じゃない?」といった会話をするのみである。円満とも不和ともいわず、家族で、ただ生きている。そういうのがいい。吉田兼好は『徒然草』で「ただ迷ひをあるじとして、彼に随ふ時、やさしくも、面白くも覚ゆべき事なり」と書いている。チェーホフも兄への手紙で「女を褒めるやつも、貶すやつも、どちらも嫌いです」といった内容を書いていた(はず)。求めてはならない。ただ一緒に生きる。その上で追求すべきは無私の楽しみではなかろうか。
4/21(火)
仕事帰りにBEFORE DAWNを聴く。今回のゲストは俵万智さん。まさか「クソリプ」というワードが出てくるとは。まごうことなき神回。ずっと聴いていたかった。
4/22(水)
ジムで時々会う、クロール8ストロークで25mを泳ぐ謎のオジサンに遭遇した。今日も恐ろしい速さで長距離をこなしていた。どうすればあれほどスムースに漕げるのか。上がり際、ストロークのコツが聞きたくて話しかけたが「いや、昔ちょっとやってただけですから」と、具体的なアドバイスはもらえなかった。自分から教えたがらないのは上手い人あるある。しかし聞いても教えてもらえない場合、それは時間が無いか、あるいは聞く側が聞いてもいいレベルに達していないということ。ううう。
4/23(木)
テレビに出ている佐野勇斗を見て娘の目がハートになっていた。ため息混じりに「はあ、こんなにかっこよくて、歌も上手いし、字も綺麗だし、運動もできて、ほんとすごい…」と呟いたので「まるでパパだな」と言うと、遠くに立っていた奥さんが振り返り、不思議そうな顔でこちらを見た。娘は微動だにせずテレビ画面を見つめている。佐野勇斗は熱唱している。我が家のコミュニケーションが新たなフェーズに入った。
4/24(金)
取引先のEさんと「出張が多いと大変ですよね」という話をした。特に東京が大変です、とEさんは言う。「東京の時は奥さんが荷造りしてくれるんですよ」と。続けて「それが、めちゃくちゃ重い。キャリーケースがパンパンなんです」と言う。聞けば奥さんは、都内で一人暮らしをしている大学生の息子さんのために、10kgの米や野菜など、Eさんのキャリーケースに一寸の隙間もないほどに詰め込むそうだ。Eさんの着替えは食材同士の隙間に緩衝材として挟まれた状態で、鉄塊のようなキャリーケースが玄関にセットされるらしい。東京出張の際、必ず息子さんのアパートに立ち寄るEさんは「だから東京の時は、ほんまに大変です」と嘆く。「階段とか、泣きそうになりますよ」ご本人は辛い話をしているつもりのようだが、こちらは別の意味で泣きそうになった。
4/25(土)
図書館の「返却されたばかりの本」というコーナーに伊藤亜和さんの『存在の耐えられない愛おしさ』があった。セネガル人のお父さんとのエピソードを綴ったブログで一気にファンになり、Twitterでフォローしていた伊藤亜和さん。本を出されたのか。絶対おもしろいはず。借りて帰り、やはりおもしろすぎて、あっという間にすべて読んでしまった。
Netflixで『栄光のバックホーム』を観た。バスタオル5枚必要。
4/26(日)
奥さんに頼まれてモヤシとネギを調達しようとスーパーに行くと、やっこネギ、青ネギ、ワケギ、太ネギと4種類並んでいた。太ネギ以外の3種は、何が違うのか全く分からない。やっこネギは冷奴用かもしれない。ではネギとワケギの違いは何か。スマホで調べると、独特な香りと辛味が特徴のヒガンバナ科の野菜がネギで、リンパ節の保護や摩擦の軽減、フェロモンの拡散といった役割として生えるのがワキゲとのこと。
昼からずっと雨が降っている。湿った空気のはるか向こうに月曜の影が迫っている。ネギとワケギの違いはまだわからない。
4/27(月)
ジム上がりの車中でBEFORE DAWNを聴く。今回も俵万智さんがゲスト。前回に引き続きおもしろかった。”起きたことは変わらないけれど、起きたことが持つ意味は変わる”という話、とてもありがたい。宮本輝の『錦繍』を読まねば。
4/28(火)
今日もクロール2000m。1200mを超えたあたりで急に屁意を催し、両隣のレーンを泳ぐ人たち全員とバランスよく距離が離れたタイミングでリリースした。キックを強めに打って音をごまかしたが、風圧はそれなりに出たと思われる。ジム全体が少し揺れたかもしれない。いつもより少しハイペースで泳いで38分50秒。放屁がなければ40分は超えていたであろう。
しかし屁というのは不思議なもので、この屁は音が出なさそうだと思って放つ屁に限って大きな音が出る。そうかと思えば逆に、この屁は音が大きな音が出そうだと思って放つ屁は大きな音が出る。
4/29(水)
叔父夫婦が来福。父と叔父夫婦、我が家の7人で会食。4年ぶりの再会。亡き祖父の破天荒エピソードで大いに盛り上がる。話の流れで私の中高生時代のエピソードも頻出。うちの奥さんと娘たちは目が点になっていた。
奥さんと娘たちのおかげで、なんとかまともに生きていられる気がする。
4/30(木)
日経オンラインのトップページにSNSの炎上案件が載っていた。Yahooではなく日経?と二度見してしまった。普段ほとんど目にしないが、今でも時々ネットでの炎上は起きているのだな。記事を読むと、確かに批判も免れない内容だったが、それにしても「こいつは責めてもOK」という空気の可燃性たるや、凄まじいものがある。炎上に加担する人は、その空気が万人にとっての正解だと思い込んでいる。不安な人ほど誰かを叩く。しかし誰かを叩いて傷つくのは自分なのである。みんなそのうち、現代の哲学の無さに疲れきってしまうのではないか。私は、近い将来で逆IT革命みたいなものが起きると確信している。
4月が終わった。
唐木俊介 エッセイ
1980年生まれ 広島県在住 会社員





