行動変容を促すアイデア
「宣伝会議田中泰延クラス」の打ち上げがあった。

生徒になってくださったみなさんには、昨年、最終課題として映画『国宝』のレビューを書いてもらった。
雑誌「映画芸術」では、『国宝』が2025年度邦画ワースト1位に選ばれていてちょっと面白かったがそれはまた別の話。
生徒のみんなはそれぞれに気合の入ったレビューを書いてくださったので、その公開が終わったら打ち上げましょうと約束していたのだった。

酒も入っていろんな与太話をしたわけだけど、広告コピーの話になった。
この「宣伝会議田中泰延クラス」は、長文を書く力をつけるライター講座なので、いわゆる「広告コピー」の講義はしなかったのだが、今回、飲み屋で初めて「コピーライティングとは」という話になった。
自分はコピーライターとして広告という仕事を長いことやったわけだけど、「コピーライター」というのは、なんとなく「言葉をこねくり回す」「うまいこと言う」「大喜利みたいな能力」「人を騙くらかす」という風に思われてるフシがある。
たぶん、そんなんではうまくいかない。自分の考えだが、コピーというのは言葉ではない。うまいこという人なんか、信用できますか。
私の結論としては、コピーライターというのは「行動変容を促すアイデアを考える仕事」だと思う。
「この食べ物の美味しさを訴求して買ってもらえるようにしてほしい」というコピーライターへの依頼に対して、味の感想をどないに言い換えても、うまいこと言うても、「知らんがな」である。「お前が食うとったらええやん」だ。
それは新しいのか、珍しいのか、懐かしいのか、安いのか、なんなのか、おのののか、とにかく食べてもらう方法を考えないと売れはしない。店に行く、目にとまる、手に取る、お金を出すというのが「行動変容」であり、そこには「アイデア」が必要だ。
「アイデア」がうまく作用していた仕事として飲み屋で思い出した事例があった。
20年ほど前のシンガポールのタクシーの、シートベルト着用促進キャンペーンである。
「安全のためにシートベルトしましょう」ということをどんなにうまいこと言い換えても、「シートベルトしないと怪我しますよ」と恐怖訴求しても、タクシーに乗るお客さんというのは、なかなか締めてはくれない。
では、どうするか。シンガポールの広告会社の誰かが考えた「アイデア」はこれだ。

女性でも、男性でも、ベルトを引き出してこれが出てきたら写真を撮ってシェアしたくなるし、積極的に締めたくなるでしょう。
こういう「行動変容を促すアイデア」を考えることがコピーライターの仕事だと思う。
言葉をこねくり回すことじゃないのだ。
つい先日、糸井重里さんに聞いたこと。
糸井さんが東京コピーライターズクラブの「ホール・オブ・フェイム」に殿堂入りしている、日本を代表するコピーライターなのはご存知の通りなのだが、コピーライターとして活動していたのは90年代初頭までだった。
その後、ネット上で「ほぼ日刊イトイ新聞」を創刊し、「株式会社ほぼ日」の社長、そして会長として様々な事業を手がけ、経営者として上場までしていても、肩書きにはずっと「コピーライター」がある。
そのことを尋ねると、
「コピーライターの発想で、あらゆる仕事はできるはずだっていう考えがずっとある」
と答えが返ってきた。
やはり、「行動変容を促すアイデアを考えること」なのだと思う。
この対話の模様は、土曜の夕方に僕がパーソナリティをつとめる、ラジオ大阪の
「FIRST DOMINO presents 田中泰延のふたりごと」でお聴きいただける。
2月は4週連続で糸井重里さんに田中泰延がお話を伺っている。
残すは2回、2月21日と2月28日。radiko エリアフリーなら全国でお聴きいただけるのでよろしくです。
後日、全4回が対談記事とYouTube映像になるのでよろしくです。
写真は、「カメラに向かってめっちゃイキってください」とお願いして撮らせてもらった1枚。

吹くわ〜。
ではまた来週。






