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移動の記憶 その4【連載】田所敦嗣の出張報告書<第25回>

田所敦嗣


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各地で食べた、料理と記憶。

ベトナム・ニャチャン(Nha Trang)にあるロアンの工場で出されるランチ。この国に来て思うのは、和食とも共通していて、どれもシンプルな味付けが多いことだ。ワーカーは若い層が圧倒的に多く、彼らは大盛りにした白米をあっという間に平らげる。

2019.4 Vietnam

ある国の人気料理の中には、なぜ日本で流行らないのだろうと思う料理もある。蘭州ラーメンはその代表的な料理で、中国ではここ30年ほどで爆発的に増えた料理の一つである。
蘭州ラーメンは「一清二白三紅四緑五黄」と言われ、
・一清:澄んだスープ
・二白:大根
・三紅:辣油(少量)
・四緑:香菜・葱
・五黄:黄色い麺
が基本である。大根の仕立てが店によってかなり違い、個人的にはこの大根が美味しいと、店も繁盛している気がしている。日本のラーメンはもはや独自の文化を遂げているし、僕も大好きだが、もっと美味しい蘭州ラーメンを日本でも手軽に食べられたらいいなと思っている。

2025.10 China

アイスランド訪問初日、ホテルから徒歩で適当に入ったレストランで出されたスープが大好きになり、滞在中いつもリクエストしていた。ブロームカウルススーパ(Blómkálssúpa)というスープは、寒い地域に住む人が編み出した究極系のような味で、カリフラワーをブイヨンで煮込んだ後、徹底的にピューレ状にし、ミルクと生クリームを加える。その優しい泡は、飲むと幸せになった。

2021.6 Iceland

スリランカでの朝と昼は、ほぼカレーだった。僕は激辛が苦手なので、見た目でなるべく辛くなさそうなカレーを選んでいたが、高確率で辛いものを引いた。それでも何日か滞在していると、どれが辛くて、どれが辛くないのか、不思議とわかるようになった。

2018.5 Sri Lanka

ミネアポリス(Minneapolis)で招待されたレストラン「CōV」で食べたLobster Mac and Cheeseは最高だった。
多忙なオーナーと同席する機会に恵まれ、米国でもっと日本の料理を浸透させるにはどんなアイデアがあるのかと尋ねると、かなりの時間を費やして議論になり、その考え方に意気投合した。
今でも付き合いがあり、彼らが日本に来る時は、できるだけユニークな店を紹介するようにしている。
伝統的な料理やルーツを重んじつつ、新しい発想や情報を取り入れることを惜しまない料理人の姿勢は、いつ訪れても満席のミネアポリスのレストランが物語っている。

2017.11 USA

幾度もベトナムに行っているのに、取材のため出張に立ち会ってくれたヒロノブさんのほうが圧倒的にホーチミンのレストランを知っていた。カイくんと3人で食べたバインミーは、今でも良い思い出だ。
若い頃は、シンプルな料理は料理と呼ばないなどと思っていたが、組み合わさる食材によって無限に化けるのが料理だと思った。

2022.6 Vietnam

どこで何を食べたかという記憶は、必ずと言っていいほど誰と何を話したかに変換され、いつまでも残り続けている。
料理の味よりも、そこにいた人や会話の方が、時間が経つほど鮮明になるのは不思議なものだ。


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田所敦嗣さんの著書

スローシャッター

スローシャッター
田所敦嗣|ひろのぶと株式会社

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    千葉県生まれ。水産系商社に勤務。エッセイスト。著書 『スローシャッター』(ひろのぶと株式会社)で、SNS本大賞「エッセイ部門」受賞(2023年)。フライ(釣り)、写真、野球とソフトボールが趣味。人前で声が通らないのがコンプレックス。