わすれ王
この夏に引越しをして、電車通勤になった。
生まれて初めての電車通いである。
これまでは自転車で3分〜5分の距離に住んでいた。
出勤時間の数分前に家を飛び出して、
00分ちょうどに建物の敷地に飛び込めばセーフという謎ルールを自作して、ゆうゆうと出勤していたのである。
だから、極限のはなし、
出勤時間の1分前に家を出たとしても、
間に合うか間に合わないかは
自転車をどれだけ本気で漕げるかにかかっている。
信号の運もあるし道路状況の運もあるけれど、
私の太ももが9割なのである。
それでも時間以内にゴールできればそれでよかった。
引越ししてからは、
出勤時間の1分前に家を出たのでは間に合わない。
運などなく、太ももも役に立たない。
これからは時刻表が10割だ。
さらに、
定期券も忘れずに更新しなければならないし、
遅延のことも頭に入れておかなければならない。
電車のなかで携帯を見るなら充電の残りを気にしておかなければならないし、
音量にも注意しておかなければならない。
たまにいる変な人にも注意を払っておかなければらない。
満員電車が来たら見送るか途中で降りなければ、やや気持ち悪い。
とにかく「ならない」ことが多すぎて、
頭がパンクする。
パンクしているから忘れ物も多い。
お弁当を忘れたり、ノートPCを忘れたり、電気を消し忘れたりする。
忘れ物といえば、
小学4年生のときに担任のオバラ先生による「忘れもの王」を決めるイベントが開催され、
宿題や連絡帳などの提出物を忘れた回数で競った結果、私は2位に表彰された。
クラス40人の前に出て、なぜ忘れ物が多いかを発表した。
先生は、当時私が住んでいた実家の一軒先のアパートに住んでいたから、忘れないように声でもかけにきてくれればいいのにと思った。
あのとき先生は30歳くらいだったから、いまはもう50歳近くになっているのか。
衝撃だ。
私はオバラ先生が嫌いだった。
ということを思いながら、
私は今夜もウーパールーパーにごはんをあげなければならないし、
育てている多肉植物を観察しなければならないし、
パンチニードルにいそしまなければならない。
おそろしいことに、
1月1日・木曜日は豪さんの担当であるから、
私は元日の朝、7:30のアラームで起床して入稿せねばならない。
それでは、また来年。
加納穂乃香
日常
ひろのぶと株式会社 事務局長。株式会社街クリ 取締役。パンチニードル職人。





