おっさんには、
駄洒落を言わずにいられない時がある。
イシモチという魚をご存知だろうか。
頭部に大きな耳石と言われる石を持ち、グウグウと鳴く魚。
グチとかニベとも呼ばれ、
クセのない白身の魚で刺身・塩焼き・煮付け・干物はもちろん、
高級な蒲鉾の原料にもなる美味い魚。
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というあからさまに伏線になる話は置いといて。
先週土曜日の明け方、腹部の激痛で目が覚めた。
この痛みは尿路結石の痛みだとすぐにわかった。
25歳の頃に罹患して以来、何度か味わってきた痛み。
尿路結石30年のベテランだ。
過去には二度入院する羽目にもなった、
いわゆる「石」は俺の持病のひとつ。
金持ちならよかったのだが残念ながら石持ちだ。
直近は4年前。
夜中に激痛に襲われ七転八倒。
救急車を呼ぶもコロナ禍で受け入れ拒否の医療機関ばかり。
ようやく搬送先が見つかる朝方までの数時間は地獄を見た。
あの日の記憶が脳裏をよぎる。
なにはともあれこの痛みを抑えなければならない。
常に鞄に忍ばせている4年前の薬。
消費期限?そんなものは俺自身が決めればいい。
効くと思えば効く。それが薬というものだ。
痛みの前に小難しいことを考えている余裕はない。
保管していた古い薬を飲み、坐薬もブチ込み、
枕を抱いて痛みが遠ざかるのを待つ。
この痛みと戦うのは覚えている限りでは通算8度目。
甲子園っぽく言うならば4年ぶり8回目の出場。
尿路結石歴を回数で割り算すると、
約4年毎にこの痛みに襲われていることになる。
まるでオリンピックだ。どんな種目だよ。
病院が開く時間までどうにか凌ぐ。
11:00。4年前に診てくれた病院へ。
尿検査と所見から、間違いなく尿路結石との診断が下る。
「薬と坐薬を多めに出しとくから、しばらく様子を見なさい」
と言われた俺はつい、
尿路結石のルーキーのような愚痴をこぼしてしまう。
「結石で欠席を重ねるわけにもいかないし、月曜から仕事に復帰したいのですがどうにかなりません?」
「石が出るまでは薬を飲んで安静にしているしかありません」
にべもない医師の返事に俺はグウの音も出ない。
今日も痛みと闘ってまでも、
こんな文章を書いているのはどうかと思う。
どうでもいいか。どうでもいいな。
上田 豪 広告・デザイン/乗り過ごし/晩酌/クリエイティブ
1969年東京生まれ フリーランスのアートディレクター/クリエイティブディレクター/ ひろのぶと株式会社 アートディレクター/中学硬式野球チーム代表/Missmystop