田中

今週もゲストは、落語家、落語立川流 真打 立川談笑師匠です。よろしくお願いいたします！

談笑

よろしくお願いします、談笑でございます！

田中

いやぁ、もうね。ここまでお話をうかがってきて。

早稲田大学法学部から、なぜか落語家。それもあの家元・立川談志師匠に弟子入りをして、そしてですね、談笑一門ができて、立川吉笑さんが一番弟子として真打になられてと。

ここまでで、ものすごく濃いぃ感じのお話をうかがってきたんですが。

談笑

ふはは。

田中

毎年ね、談笑師匠は、私もしばしばお伺いしますが、独演会*。

※ 独演会：一人の落語家が高座を務める落語会。一人で二〜四席の噺を演じることが多く、好きな噺家を深め、時間をかけてじっくり落語の世界に浸れるのが特徴。前座が開口一番を務めたり、ゲストという形で他の噺家や芸人が登場することもあります。

談笑

はい。

田中

このテーマというのが、いろいろされてきたと思うんですが。

談笑

ええ、ええ。

田中

今年、2025年というのは、独演会はどういうテーマで？

談笑

都内で月例独演会というのは、二百何十回かな？ ずっとやっているんですけど。

今年に関しては、「創作・改作大会」。

田中

創作・改作大会！

談笑

つまり、古典で自分が気に入ったのもお客さんが好きでいてくれるものもあるけれども、そういうのじゃなくて新しいもの。

できれば、ネタ下ろし。つまり初演ですね、初めて演るやつ。というのを、たくさん、集中的にやろうと。そういう年でしたね。

田中

それは、新しくつくった落語が多い？

談笑

多いです。多いし、初めて演る、初めてかける落語。それを2時間、三席、ひと月に1回やるわけですけども。

談笑

つまりはですね、クリエイティブというか。

田中

うん。

談笑

新しいものをつくる。新しい落語なり、新しい発想・物語をつくるっていうのって、なんかやっぱり、枯渇してくるわけですよ。

田中

はい。

談笑

今年は私が還暦ということもあって、そのあたりどこまでまだいけるんだろうと。

田中

談笑さん、還暦？！

談笑

還暦ですよ。

田中

えぇ〜！ びっくり！ いやぁ、若く見えるわぁ。

談笑

5年くらい前からね、ほぼ還暦だと思ってたの。

田中

どういうこと、それ？ サバ読みすぎじゃないですか。

談笑

いや、自分の中。「あーぁ、もう還暦だな」っていうふうにずっと思っていたら、「あ、まだ俺58だぞ？！」みたいな。なんかヘソクリ見つけたみたいなね（笑）。

田中

でも、本当に還暦を迎えるわけですね。

談笑

うん、今年9月でね、還暦を迎えて。

で、それもあって、どこまで自分はいけるのかなと。

田中

うん、うん。

談笑

月例独演会というのは、いつも（自分を）追い詰めるくらいのつもりでいますから。毎月毎月でね、お客さんも毎月来てくれるから、もう勝負なわけですよ。

田中

ええ。

談笑

追い込んで追い込んで。

で、追い込んだらどうかな、できるかなと思ったらね、できたの、これが。たくさんできてね。

田中

はぁ〜。

談笑

あっ、まだいけるなぁと。

新作、新しいのもそうだし。古典をこんなふうに変えましたとか。

田中

うん、うん。

談笑

それも、「あっ、この手があったか！」とか、すごい大発見があったりとか。

田中

ほう〜。

談笑

もう、実りのある年でしたね。

田中

大阪での公演というのは、今後予定はありますか？

談笑

ありますね、あります。

大阪で独演会をやったりだとか、神戸で独演会をやったりだとか。

田中

はい。

談笑

あの、日程はたぶん決まっているんですけど、私がいま知らないっていう……。

田中

わはははは。

談笑

わはははは。

田中

僕が談笑師匠の落語を生で初めてうかがったのは、大阪のね。上本町。

談笑

あぁ〜！ はいはい、はいはい！

田中

その時も何席か演っていただいたんですが。

前半、大笑い。最後、号泣ですからね。

談笑

うん！

田中

これね、落語って、みなさんまだ落語会に行かれてない方は、ぜひ行ってほしい。

談笑

ねー。

田中

噺家さんがいて、音声しかないから。映像というのは自分で想起するしかないから。

談笑

そうそう。

田中

だから、僕の中では（落語って）、落語家さんとお客さんが協力して一つの映画をつくるような。そういう芸術だと思うんですね。

談笑

まさに、そう。イマジネーションとして。

ですから、『令和版 現代落語論』。その中の二次元コードから映像としてノーカットで九席入っていますけども。これはあくまでも入り口であって。これはこれで、楽しめるけれども。

現場で、客席で、一体感として空気ごと楽しむっていう。

田中

うん、うん。

談笑

あれが落語の本来ですよね。

田中

いやぁ、生の落語の高座というのは、本当にいい体験になるのでね。ぜひ、足を運んでいただきたいですね。

談笑

ええ。

田中

『令和版 現代落語論』も、すごくいい入門になるんですよ、動画で全部（高座を）観れますから。

談笑

うん、うん。

田中

でも、これ（本）は、配信動画。生の高座は……これは談笑師匠が酒の席では非常に下品な喩えをするので、今日は言いません。

談笑

あははははは！ すごく、わかりやすい（喩えで）。

田中

あははは、（ライブと動画が）どう違うかっていうね。

田中

新作落語・創作落語というものに関して、いつも織り込んでいきたいテーマみたいなものって、あるんですか？

談笑

落語の基本といいますかね、談志は「業の肯定」という言い方をしていて。

田中

業の肯定。人間の業ですか？

談笑

人間の業です。どうにもならない心の中の部分ですね。

田中

ふうむ。

談笑

それは、私なりにもうちょっと軽く言うと、聴いている人が生きやすくなるような。そんなエッセンス。

田中

ああ、なるほど。

談笑

ですから、落語というのは、漫才だとかコントみたいに笑う芸っていう一辺倒ではなくて、そういう心に沁みる人情噺、ヒューマンドキュメントみたいなのもあったりするように。

田中

ええ。

談笑

あとはなんだろな、枕話で。枕って、落語に入る前になんでもない話でね。

「今回の政府の増税はどうよ？」みたいな話を。で、みんなで「そうだよねぇ」と言って。その、日頃の憂さを晴らす。ただ笑うだけじゃなくて。

田中

はい、はい。

談笑

「そうだよねぇ」って、昔の井戸端会議の延長みたいなね（笑）。

田中

ええ、ええ。

談笑

あれって実は生きる力というか。

田中

わかる〜。

談笑

生きづらい中でも、なんかここでゆっくりフッと息を抜きましょうよと。

それが落語だと私は思っていますんで。

田中

みなさん、これね、ラジオ聴いている方、談笑師匠の高座、来てください。

特に独演会。枕だけで30分過ぎていたこと、ありますからね。

談笑

そうそう（笑）。このあいだも40分でした（笑）。

田中

40分（笑）！

でも、それが楽しいんですよ。お客さんと、なんか本当に井戸端会議というか。

談笑

ええ。

田中

「どうよ、今度の首相と大統領のあれは？」とかね。

談笑

うんうん。クマがどうとかね。

田中

もうね、これが、楽しいんですよね。

談笑

うん、たぶんね、YouTubeで出したら即バンですよ（笑）。

田中

あっはっはっは。絶対あかん（笑）。時事問題、山盛りでね（笑）。

談笑

ダメなやつ（笑）。

そんな、楽しい空間なんです。

田中

立川談笑師匠、弟子の吉笑さんも真打になられて。これから落語会もやられていくと思います。

ぜひ、この『令和版 現代落語論』、本を携えてですね、（落語会に）向かってほしいんですが。

談笑

うん！

田中

もう、いくらでも話したいんですけど、師匠とは。

談笑

ねぇ〜！ キリないですね！

田中

このつづきはもう、ちょっと飲み屋で。

談笑

忘年会だ！ 忘年会だ！

田中

もう、今年も終わりですからね。

田中

はい。なんかね、楽しくてちょっと切なくて。

談笑

そうそう。

田中

そして、いろんな文化の融合みたいな。

談笑

うん、うん。

田中

これが、談笑師匠の落語の世界にも通じているのかなと。それで、この曲を（開演前のBGMに）選んでらっしゃるのかなと。

談笑

あぁ〜、はいはいはい。うん、ボーダレスな感じがね。

田中

いやー、いい曲で最後締めくくっていただきました。ナンシー梅木で「マイ・イチバン・トモダチ」。

1カ月にわたって、落語家・立川談笑師匠にお話をうかがいましたが、いやー楽しかったですね！

談笑

楽しいですね、キリないですね〜！ わははは。

田中

またぜひ、お越しいただきたいと思います。

談笑

はい、よろしくどうぞ。

田中

ありがとうございました！

談笑

ありがとうございました。良いお年を！