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後ろ影の見ゆるまではと【街角diary】2026年10月12日:田中泰延

田中泰延


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後ろ影の見ゆるまではと


お世話になった方の御尊父が逝去されて、葬儀に参列した。


喪主は故人のご長男で、私の出版社の著者のひとりである。


私は、生前のお父様にお会いしたことがなかったが、釣りを愛し、旅を愛し、そして楽器の演奏も楽しまれた、カッコいい、カッコいい方だった。



親父さんは、息子が本を出され、作家となられたことをことのほか喜んでくださった。

友人に会うたび、自慢の息子の本をすすめ、買っていただいていたという。




棺に、その本が2冊、納められていた。


それをみた瞬間、すべてがわかった。


一冊は、あっちで親父さんがまた、楽しみに開いてくれる。

一冊は、あっちで会う人にまた、すすめてくれるんだな。




私は、出版社を始めてよかったと思った。


人は死んで終わりではない。


それは、あの世があるとか、そんな形而上の話ではない。



旅は、続いていく。


私のここまでの旅も、間違っていなかったと思えた、秋の日だった。



花だけじゃなくて、おつり用の20円も、お渡しすればよかったかな。

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  • 田中泰延 映画/本/クリエイティブ


    1969年大阪生まれ。株式会社 電通でコピーライター/CMプランナーとして24年間勤務。2016年退職し「青年失業家」を自称し執筆活動を開始。2019年、文章術を解説する初の著書『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)を上梓。16万部突破。2020年、印税2割スタート・最大5割の「累進印税™︎」を掲げる出版社 「ひろのぶと株式会社」 を創業。