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2025年11月5日「街角diary」廣瀬翼がお届けします。

廣瀬 翼


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“応援してはいけない”応援上映」

ずっと興味のあった、映画『大長編 タローマン 万博大爆発』の応援上映。

それが、11月3日(月・祝)の文化の日に、東京・大阪の複数の映画館で開かれる——ラジオ大阪の収録へ向かう電車の中で、知った。

この日の収録ゲストは、立川談笑師匠。予定ではお昼前に終わる。

加納さんを誘ってみた。

ふたりで行くことになった。

不思議な感覚だ。考えてみたら、加納さんと「プライベートで」「2人で」会うのは、初めてだ。

収録はとてもスムーズで、談笑師匠と泰延さんのトークが弾みに弾んでいた。

聞いているだけで、楽しかった。

立川談笑師匠、ありがとうございました!

みなさま、12月のラジオ大阪の放送を、お楽しみに!

収録後、お昼ご飯を食べてから、加納さんと映画館へ。念願の「“応援してはいけない”応援上映」だ。

タローマンの応援上映とは、ペンライト・グッズ持参、コスプレ大歓迎の【発声OKの上映会】

ただし、タローマンは応援されるとダメになってしまう。タローマンを応援してはいけない。

だから「“応援してはいけない”応援上映」という。

出典:映画『大長編 タローマン 万博大爆発』Webサイト

「応援上映」自体が初めての体験。ただみんなで「がんばるな〜!」と楽しく声を上げるのかと思っていたら……

なんか、タンバリンを持ち込んでいる人がいる(1名)。
鮮やかに輝くペンライトを持ち込んでいる人がいる(5名くらい)。

なんだこれは。

上映開始。

「よっ、待ってました!」の掛け声。

スクリーンに現れる登場人物にかけられる「風来坊〜!」「えらーん!」の声。

アップになった登場人物に振られるペンライト。しかも、普段は赤、エランの登場シーンは全員が緑にペンライトを変えて振るという、統率の取れ具合。

♪ なんだこれは なんだこれは なんだこーれは♪」の音楽に合わせて叩かれる、タンバリン。

……これは、映画を見に来ているというよりも、あれだ。

ショッピングモールでの戦隊ヒーローのショーを見に来ているみたいだ。

ただでさえ混沌とした「タローマン」が、より混沌とした世界になっていく。

上映開始から少しして、隣の席に男性が座った。

深々と腰掛けて、特に応援する様子もない。応援上映だと知らずに来たんじゃないかと思うような人だった。が……

“ワシのビル”が破壊された時……

「しゃちょー!!!」

出典:映画『大長編 タローマン 万博大爆発』公式 Xアカウント

さっきまで静かだった席からの、のぶとい叫び声に、思わずびっくりしてそちらを見てしまった。

ちなみに「しゃちょ〜!」はこの日の声出し一番人気。会場全体の声が一番大きかった。

反対に、「がんばるなータローマン!」は誰も声を出さない。本当に応援上映に来たのか? それが目的だったのではないのか? と不思議になるほど。

「応援してはいけない」が正しく実践され過ぎている。最初は「がんばるなー」と言おう、みたいな盛り上がりだったのに、それすらない、本当に誰も応援しない。

タローマンファン、教育されすぎでは。

それ以外のシーンは誰かが何か声を出したりしているのに、そこだけは場内がシーンとしていた。

隣の加納さんが一番気に入った掛け声は、

登場人物・エランが「ここはどこ」と言った時の会場の返し

「心斎橋!」

だったそうだ。

いやー、大阪だな、と思った。

ユニバのターミネーター2を思い出した(今は終了しているアトラクション)。

いやー、楽しい時間でした。

最初こそ、「え、そういうノリ?!」「なんだこれは」となったけれど、良き体験・いい一体感でした、「“応援してはいけない”応援上映」。

何より、何も気にせず笑いたい時に笑えるのが、いい。

今後の「“応援してはいけない”応援上映」は、毎週末「109シネマズ大阪エキスポシティ」での開催。それから、11月16日(日)には秋田の御成座でもあるそうです。

御成座は、手書きの映画看板が有名な映画館。その看板を見るために東京からのツアーバスが出ているというのを、テレビ番組で見たことがあります。

大阪の方と御成座へ行かれる方、楽しいのでぜひ。

でも、タローマンは応援してはいけないよ。

▶︎「“応援してはいけない”応援上映」の情報はこちら

ところで、タンバリンを持ち込んでいた、中央下座よりに座っていた人よ。

最後の最後までタンバリンをやり切ってくれて、ありがとう。

ああいうのって、一人で続けるのはなかなか強い心を持っていないと、途中で諦めそうになる。

でも、唯一のタンバリン。途中までやっていたのに中途半端に消えて行ったら、全体がしらけてしまう。

あなたが強い心でタンバリンを叩き続けてくれたから、最後まで笑って楽しめる応援上映になりました。

私は、あなたにこの日の上映MVPを送りたい。

やり切るって、大切なのだ。

本記事で紹介した映画

大長編 タローマン 万博大爆発
監督 藤井 亮
操演 岡村 渉

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    1992年生まれ、大阪出身。編集・ライター。学生時代にベトナムで日本語教師を経験。食物アレルギー対応旅行の運営を経て、編集・ライターとなる。『全部を賭けない恋がはじまれば』が初の書籍編集。以降、ひろのぶと株式会社の書籍編集を担当。好きな本は『西の魔女が死んだ』(梨木香歩・著、新潮文庫)、好きな映画は『日日是好日』『プラダを着た悪魔』。忘れられないステージはシルヴィ・ギエムの『ボレロ』。