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2025年12月24日「街角diary」廣瀬翼がお届けします。

廣瀬 翼


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刺し子を生み出すその手元。

みなさん、こんにちは、こんばんは、おはようございます。

すいすい水曜日。
クリスマス・イブの本日のお届けは、廣瀬翼です。

私、先週の「街角diary」でこう、書きました。

そんな加藤さんの参画先の一つである刺し子の「TERAS」が、先日原宿での合同ポップアップストアに参加されていて、刺し子の実演をされていました。

そこで聞いたお話が面白かったので、そのことも書こうかなーなんて思っていたのですが……それはまた来週のトピックに! お楽しみに。

(2025年12月17日更新「街角diary」より)

ということで、本日は予告通り、12月6日(土)におじゃました原宿のPOP-UPで見た刺し子の実演のお話です。

「育てる、手づくり。」が集まる原宿のPOP-UP

大阪にお店を構えるレザーストア「スナワチ」が中心となって年に数回開いている合同POP-UPストア。毎回、原宿・明治神宮前のデザインフェスタギャラリーで開催しています。

今回は12月5〜8日の開催でした。このPOP-UPの第1回が2015年、なんとこれで10年目とのこと。

今回のPOP-UPに集まっていたのは、レザー専門店の「スナワチ」、暮らしとうつわのお店「草々」、着物リメイクのブランド「konote」、デニムブランド「NIMUDE」、靴とアパレルのお店「フナナカ洋装店」の6つのお店。

どこも、使うことで育てる、つくり手の哲学を感じられる物を置いています。

スナワチさんのブランドコンセプト「愛せるモノを、持たないか?」。まさに、そういう人たちです。

そこで一緒にPOP-UPへ行った「『お金を払ってでも読みたいことを、自分で書けばいい。』と思える書く力の教室」のえりこさんとおしゃべしていたら、TERASののコーナーに小さなテーブルが置かれ、刺し子の実演がスタートしました。

刺し子の実演!

ハンドタオルほどの大きさの黒い布に、丁寧に下書きされた線。その上を、一刺し一刺し縫っていく様子。なかなかのスピードです。

私たちの他にも新聞記者さんもいらっしゃっていて、じーっと見つめたり写真を撮ったり。それでも黙々と進めていく集中力がすごい。

刺し子のお姉さんと、一緒にいらっしゃった職員さんに、お話も伺えました。

廣瀬:一つ仕上げるのに、どれくらいかかるんですか?

お姉さん:今つくっているのだと、1週間くらいですね。

廣瀬:こんな集中力で、こんなにスイスイ進めて、それでも1週間! 一つを仕上げるのに、手間も時間もかかっているものなんですね、刺し子って。

職員さん:そうなんです。それでも彼女は速いんですよ。スピードは人によって違って、同じものでも1カ月かける方もいたり。一人ひとり違います。

お姉さん:サイズにもよるし、柄にもよります。これは「一目刺し(直線のなみ縫いで幾何学模様をつくる縫い方)」なので早くできるほう。もっと複雑な模様にしたり、ドットで描いたりするような縫い方だと、時間ももっとかかります。

廣瀬:柄とか、糸の色とかは、最初から決まっているんですか?

お姉さん:それも、自分で考えて決めています。今回は、伝統的な模様を組み合わせました。それぞれの模様に、意味があるんですよ。

廣瀬:あ、水色の部分は全部縫い終わっていて、緑の横も縫われていて、今は緑の縦を縫ってらっしゃるんですね。

お姉さん:はい、そうです。

廣瀬:……これ、裏ってどうなっているんですか?

お姉さん:こんな感じ。うまくできている刺し子はね、裏もきれいなんですよ。

廣瀬:本当だ! 裏も模様になってる! へえ〜おもしろい、ポーチとか商品になると、裏は布地に縫い付けられていて見られないから。

お姉さん:そうですよね。でも、裏も楽しめるのも、刺し子の一つの魅力だと思います。

廣瀬:今つくっているのは、どの商品になるんですか?

お姉さん:何だろう……この大きさだと、ウォレットかな?

職員さん:サイズとしては、そうかな。うちでは自由に柄をつくってもらって、できた刺し子を見てから、どの商品にするのか、どの部分を使うのかを決めるんですよ。つくる柄の傾向も事業所*ごとにちがって、それぞれ特徴がありますね。

お姉さん:今回のは大きさも模様も、なんとなく「このあたりが使われるかな」とかイメージしやすいんですけど、でも縫っている間は商品になったときにどんなふうになるかはわからなくて。職員さんが形にしてくれたのを見て「おおー、こうなったんだ」となりますね。

廣瀬:じゃあ、まだワクワクですね。

お姉さん:ワクワクです(笑)。

廣瀬:もともと刺し子はされていたんですか?

お姉さん:全然。ここ(の事業所)にきてからです。

職員さん:1年くらいかな?

お姉さん:それまで裁縫はむしろ苦手かなくらいで。

廣瀬:えっ、そうなの?!

お姉さん:(笑)

廣瀬:それが、なぜ刺し子をすることに……。

お姉さん:……なんとなく? じゃあ、(就労継続支援事業所にあったから)やってみようかなーみたいな。

廣瀬:それで、やってみたら、結構楽しかった?

お姉さん:そうですね。

廣瀬:でも、1年くらいでこんなきれいに、スイスイと模様をつくっていけるようになるんですね。

職員さん:このウォレットが、彼女が初めてつくった作品なんですよ。

廣瀬:一作目から、細かい! かわいい! 初めて形になった時は、そうとう、うれしかったのでは……?

お姉さん:うれしかったですね。こういうものになるんだ、と。それで、それを買って行ってくれる方がいる。初めて自分がつくった刺し子を使った商品が買われたのを見た時は、うれしいというか、不思議な感覚でした。

刺し子をつくっている作業を中断して、たくさんお話を聞かせてくださったお姉さん、ありがとうございました!

一刺し一刺し手でつくられた「TERAS」の刺し子たち

「TERAS」はTOMOS companyによる刺し子のアパレルブランド。会社名は「灯す」、ブランド名は「輝らす」。私はその名前も好きです。

Tシャツやパーカー、さらにポーチやカード入れ、ウォレットやコースターなどの小物もあります。

出典:TERASオンラインストア(廣瀬も持っています)
出典:TERASオンラインストア(廣瀬はこのグレーを持っています)

廣瀬がメイクポーチとして使っている小さなポーチ。今は化粧品で、この時よりもちょっとベージュみがましていますが……

特徴は、刺し子をTOMOS companyが運営する「就労継続支援 A型・B型施設」の利用者さんがつくっていること。

TOMOS companyは「福祉 × クリエイティブ」を掲げ、利用者一人ひとりの個性を活かした価値あるモノづくりで、就労事業のビジネス化を目指しているそう。

“ビジネス化を目指す”とは決して単に儲けることが目的なのではなく。法改正などがあっても通所している方の居場所を守るために、“事業として成り立つ”ことが重要なのだといいます。

“個性を活かす”というキーワードについても少し。この言葉を掲げると、アーティストみたいに扱うようになりがちなイメージが私はありました(それも才能が開く・認められる素敵なことで、社会に必要な取り組みだと思います)。

でも、TERASの商品からはその特別なアーティストとしての扱いを、いい意味であまり感じません。

TERASのいう“個性を活かす”は、「一人ひとりが自分に合ったペース・働き方で縫っている」ような気がしています。つくり手がのびのびと笑って縫っているのを、触っていて感じられる。それって、とっても大事な「個性の活かし方」だと思うんです。

そしてそれが、私のTERASが好きな理由の一つでもあります。

つくり手も私も、同じ“社会に参画する一人”と感じられる。障がいの有無の境目を、感じない。

……なんて、意識高そうに書いてみたけれど、TERASのものを持っている理由の一番は「ナチュラルでかわいいから」なんですよね、それも大事。

TERASの商品はオンラインストアで買えるほか、原宿の「ハラカド」にも常設店舗があります。

▶︎TERASオンラインストアはこちら

商品は全部一点モノ! 「この柄が好き」「このパターンが気に入った」があったら、迷わず買うが吉です!

M-1でヤーレンズが、ヘラルボニーのネクタイをつけていたことがSNSで話題になっていました。

タレントやスポーツ選手、著名人が縁あるものや、社会へのミッションを掲げたブランドのアイテムを身につけ、そしてそれが話題になることがこの数年、以前にもまして増えてきたような気がしています。

何を使っているか、何を身につけているか。

それが、「私」の社会への姿勢を表すことにもつながる。

だけどそれは、強く主張するのではなく、さりげなく。そして、モノがいいのは大前提、その上で背景にストーリーやメッセージがあること。

そんな社会になってきているなと感じています。

今日紹介したTERASも、そういった「私は社会がどうあってほしいと考えている人間か」を表せるブランドの一つです。

そして、私は「ひろのぶと株式会社の本」が、そういうブランドの一つになったらいいなと思っているし、

「街角のクリエイティブ」というWebメディアが、そういったブランドたちのストーリーやメッセージを伝えていく場にもなったらいいなぁ、と思っています。

今年は、まさにそういう連載コンテンツに取り組みました。

▶︎「尾道産 天然真鯛の炊き込みご飯」の美味しい秘密を調べに、ひろのぶと株式会社の仲間たちが尾道へ向かった「ひろのぶと、おのみちへ行く。」

▶︎田中泰延が日本の社長たちにさまざまな角度からお話を伺うラジオ大阪の放送 & 街クリ連載「田中泰延のシャチョーとシュチョー」

「街クリを読んで、買いました!」「シャチョーとシュチョーを聞いて、行ってみました!」なんて言ってもらえるようにしていきたい! そういった声、Twitter(X)でも聞けるとうれしいです。

そして、「街クリで / シャチョーとシュチョーで、紹介してほしいです!」というお仕事のご相談も、お待ちしております!

▶︎ 「街角のクリエイティブ」へのお問い合わせはこちらから

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    1992年生まれ、大阪出身。編集・ライター。学生時代にベトナムで日本語教師を経験。食物アレルギー対応旅行の運営を経て、編集・ライターとなる。『全部を賭けない恋がはじまれば』が初の書籍編集。以降、ひろのぶと株式会社の書籍編集を担当。好きな本は『西の魔女が死んだ』(梨木香歩・著、新潮文庫)、好きな映画は『日日是好日』『プラダを着た悪魔』。忘れられないステージはシルヴィ・ギエムの『ボレロ』。