文学フリマ、ありがとうございました。
三連休の中日だった、11月23日(日)。
文学フリマがありました。
昨年から会場が東京ビッグサイトに移った文学フリマ東京。
回を重ねるごとに出店数が増え、来場者数も増え、今回もまたまた新記録更新。12時〜17時の5時間で、1万8千人を越える人々が集ったのだとか。
いろんな人がいて、いろんな作品があって。
「本がなくなることは、ないな」という希望と、「こんなに文学が好きな人がたくさんいるなら、もっともっと本屋さんが街に増えて、本が盛んになればいいのに」というむずがゆさ。
毎回、文学フリマに行くとその両方を感じます。
……なんて言っていても、楽しい場です。
私たち、ひろのぶと株式会社も今年から参加。今回で2度目の出店でした。
ブースにお越しくださった皆様。
当日は来られなかったけれど、SNSで応援くださった皆様。
そうして、文学フリマ東京41の終了後にオンラインストアで販売を開始した『ひろのぶ雑記 vol.3』をさっそくご注文くださった皆様。
たくさん、たくさん、ありがとうございます!
文学フリマのようなイベントは、直接読者の方とご挨拶して本をお渡しできるのも、たまたま会場で出会った方とお話しできたり本を手に取ったりしていただけることも、うれしい。
たとえば農作物も「生産者の顔が見える」「直接生産者から買う」ことが人気になっている昨今(ちょうど、今週の「田中泰延のシャチョーとシュチョー」でも、マルシェを運営する株式会社サークルチェンジさんにお話を伺っています)。
本も、同じなのかもしれません。
#文学フリマで買った本 を紹介します
今日は、ひろのぶと株式会社の「#文学フリマで買った本」を紹介します。
【目次】
『不思議な人』幡野広志さん

写真家・幡野広志さんのブースから。
ポストカード集です。全部で10枚。表は、幡野さんが撮った写真。裏には幡野さんがこれまでに出会った“不思議な人”たちのことが書かれています。
なんと、文フリ開始から3時間足らずで100部が完売したそう。
みんな、怖いもの見たさ、あるよね。こんな……こんな、“不思議な人”の話、そうそう聞けないんだから。
10本のお話、と〜っても怖ーーーーいのもあれば、クスリと笑っちゃうのもあり、じんわりと優しさが広がるお話もありました。最初は全部が怖いのかと思っていたから、ちょっとホッとした。
しかし何より、と〜っても怖ーーーーいお話でも、幡野さんはサラッと書いちゃうんです。「こんなことがあったんですよ、やばいよね、うん。」みたいなトーン。
それが、すごい。独特。
ショートショートを読んでいるような感覚なのだけど、これが実話だというから、世の中も幡野さんもすごいし不思議よなぁ。
表の写真と文章につながりがないようで、あるようで、ないようで、ある。それがまた、不思議感と怖いのにどこか心地いい読後感を増してくれているような気がします。
幡野さんのこういう、写真のことでも自分のことでもない文章は、あまり読んだことがないような気もするのだけれど、まだまだ、もっともっと読んでみたい。
追加の販売予定はなさそうですが、幡野さんのnoteでは10篇のうち「呪いの女」「大仏の男」「山に住む犬」が公開されています。
『意味よさらば』古賀史健さん

ライター古賀史健さんの「batons」のブースから。
古賀さん、今回の文学フリマのために30本のエッセイを書き下ろしたそうです。
……えっ、毎日noteとは別に?! つい最近『集団浅慮』を刊行されたところなのに?!
古賀さんが主催されたライター講座「batons writing college(通称バトンズの学校)」に通っていた私。
実は、前回の文学フリマの後、古賀さんに「今度は廣瀬さんもなんか書いてみなよ。忙しいと思うけど、きっとたのしいよ」といただいていて。「まずは書くつもりで考えてみます!」なんてお返事をしていたのですが——。
全く、その余裕はなかった。
だって、街クリもあって、ラジオ大阪もあって、本もあって、イベントもあって、多方面にいっぱいいっぱいなんだもん! と思っていたし、それは嘘ではないのだけれど。
こんなに毎日書いて本も出したばかりの古賀さんが、文学フリマのために30本も書き下ろしてしっかりした本をつくっているのを見ちゃったら、忙しいんだもんとか余裕がないとか言い訳でしかないんだよなぁと、グヌヌときます。グヌヌ……。
ああ、だから、古賀さんの書くものを読むのは、ちょっと畏い。背筋がきゅっとしてピンとする。
そうして開いてみた一篇目。
「ぼくはエッセイが書きたかった」
どうやってもエッセイが苦手である。
書こうとしても、いつの間にかコラムっぽい文章になってしまう。
呆気に取られました。え? あんなに毎日書いていて、エッセイが苦手なの??
けれど、読んでいるうちに、なんとなーく分かってきました。確かに、コラムとエッセイは曖昧だけど違いがあるのかもしれない。
思わず、自分の過去のnoteもどっちか読み返しちゃった。
古賀さんが「苦手」から書いてくれていたから、少しだけピンとした背筋を緩めて、お茶を飲みながらでも読めそうです。
装幀についても、少し。わんこ(たぶん、ペダルくん)が描かれているノートに、うっすらとカブトムシとサッカーボールがあるなぁと思っていたら……

帯をめくった下、でした。起きてたペダルくんも寝てる。かわいい。
さらにカバーをめくると、仕事場と、本棚の前で寝ているペダルくんが出てくるよ。かわいい。
そして「エッセイが書きたかった」の表れのように、仕様は仮フランス装で天アンカット。それもまた、紙の本を手にする楽しみです。
古賀さんのnoteによると、今後の通販での販売も検討されているそうです。置いてくださる書店さんも歓迎とのこと。
『書きたいことはないのですが』田中裕子さん

こちらも「batons」のブースから、ライター田中裕子さんのエッセイ集。
これまで、ライターとして本をつくってきながらも、「自分の本」をつくったことはなかったという田中さん。
でも、ご自身がライティングを担当された書籍を通して、本づくりの“クラフト”の部分の楽しさを知り、自分の本をつくってみようと思われたそうです。
それって、なんて素敵な体験と変化なんだろう。
おもしろいのが、それで本をつくろうと考えた時のアプローチ。
なんと田中さん、本に書くエッセイの「テーマ」を8人の知人に出してもらっているのです。その8人から“発注”を受けたという想定で、書いてみる。その8人が“擬似編集者”。
目から鱗でした。なるほど、ライターらしいつくり方かもしれない。おもしろい。
どの文章も田中裕子さんで、だけどテーマを出した“擬似編集者”によって田中さんの書くものも少し変わっているように感じました。どこがとか、どうしてとか言われると、難しいのだけど。
それは、本当に文章が変わっているのかもしれないし、読む側の私の意識なのかもしれない。けど、それが文章であり、人と人だよなぁ、とも思いました。
ところで、お題を出した8人はこの本にどのような感想を寄せるのでしょう。次は、そちらも読んでみたいなと思いながら。
さて、こちらも装幀について、少し。
カバーはないのですが、表紙がすごい。

文字のところがポコポコしているの、わかるでしょうか。
「パチカ」という特殊な紙。加熱型押しした部分が透明になるという特性があり、表紙の文字部分はすべて加熱型押しされています。
そして、その透明になった部分から、その下にある別丁扉の色が透けているのです。
私たちが購入したのは、別丁扉が水色のバージョン。他にもピンク、紫、黄色で4種類がありました。
このパチカ……オシャレなんだけど、オタカイ。そうそう本で使える用紙ではありません。こんな装幀に出会えるのも、文学フリマならではです。
『ホンのときめき』中江有里さん

中江有里さんの事務所・オフィスクレヨンさんのブースから。
なんと、中江有里さん自ら販売されていました!
文学フリマ東京41
— ひろのぶと株式会社は出版社です。 (@hironobutoco) November 23, 2025
ただいま開催中✨
『令和版 現代落語論』で立川談笑師匠と対談くださっている中江有里さんが、なんと今回、出店者にいらっしゃいます!
ご挨拶&文フリ限定文庫と先行発売の本をお迎えしました。
文学フリマ東京41は本日17時まで、東京ビッグサイトです! pic.twitter.com/0bcNbYOBLZ
今回の文学フリマ限定でつくられたという本書。これまでに中江さんが「週刊新潮」と「婦人公論」に寄稿されてきた書評が集まっています。私が数え間違えていなければ、57本! つまり、57冊の本と触れ合う入り口に出会える一冊です。
中江さんは、書評についてご自身のnoteでこう書かれています。
書評は「新刊」について書かかれることが圧倒的に多い。
中江有里さん note「文学フリマへの道2」より
ところが「新刊」が3ヶ月たって「既刊」になったころには、書評も読まれなくなる。
(中略)
書評は言うなれば「なま物」。
そして、だからこそ、今回この本をつくられたそうです。
書評は「なま物」と書いたけど、食べ物みたいに古くなるわけじゃない。
中江有里さん note「文学フリマへの道2」より
目が届かないところへいくから、読まれなくなるだけだ。
これを本にまとめたい。
どの書評も、文字が大きめで読みやすい文庫の3ページ弱。
順番に読んでいくのも、目次から好きな作家さんや気になる本の書評を読むもよし。たまたまパッと開いたページにある書評を読むもよし、です。
いくつかを読んでみましたが、まだ読んだことのない本がたくさん。そうして、どの書評も初めて読んだ私にとっては「新しい」書評で、紹介されている本は「新刊」でした。
本との出会いとしても、書評の学びとしても、とてもとてもありがたい一冊です。
ちなみに中江有里さん、文学フリマに出店しようと考えた経緯やこの本づくりについてをnoteで「文学フリマへの道」として更新してらっしゃいます。
『日々、タイガース、時々、本。 猛虎精読の記録』中江有里さん

同じく、中江有里さんのオフィスクレヨンのブースから。11月25日発売の書籍を、文学フリマで先行販売されていました。
今や熱烈な阪神タイガースファンとしても有名な、中江有里さん。
この一冊、カバーも帯も見返しの紙の色まで、もう阪神タイガース一色!
その内容は……「観戦記 × 日常 × 書評」
ど、ど、どういうこと??
中江さんが書く日常と阪神タイガースについての話を読んでいたはずなのに、気がついたら本の紹介もされている……そんな不思議な一冊です。
「トラに学ぶ29冊」。29の本が紹介されています。
まさか、『アルジャーノンに花束を』が阪神タイガースに結びつけられるとは思わなかった。
まさか、『博士の愛した数式』の書評が阪神タイガースに関する話の中で繰り広げられるとは思わなかった。でも言われてみたら、そうだ、博士は江夏の話をよくしていた、そうだそうだ。
先ほどの『ホンのときめき』に集められた書評とはまたタイプの違う、読んでいて元気が出るエッセイ集であり書評集です。
あと、たくさん入っている中江さんの阪神を応援する姿を収めた写真たちが……美しく、かわいいです。
……ああ、なんだか、阪神百貨店のイカ焼きを食べたくなってきた!
11月25日発売
日々、タイガース、時々、本。
猛虎精読の記録
中江有里|徳間書店
※ 本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。
中江有里さん出演映画 最新作情報
中江有里さんが26年ぶりに主演を務める映画『道草キッチン』が全国で公開中。
。
『HIROBAマガジン』 produced by 水野良樹さん

「いきものがかり」の水野良樹さんが2019年にスタートした、実験プロジェクト「HIROBA」のブースから。
HIROBAは前回・5月の文学フリマ東京にも出店されていて、他にも今年は札幌、岩手、大阪、福岡……と多くの文学フリマに出店されているそう(検索してみて、地方もいっぱい出ていてびっくり!)。
今回、出店を知ったのは、ひろのぶと株式会社のブースの正面がHIROBAさんだったから。
なんと、水野良樹さんご本人がブースでサインをされていました!
もちろん、私もいただきました。
もし高校時代の自分に、「いきものがかりの水野良樹さんが5時間も自分の前にいる日が来るよ」と話しても、信じないだろうなぁ。
私たちが人間人形POP揺れ作戦をはじめたら……
ひろのぶと株式会社 @hironobutoco
— みっひー (@Jun_miffy) November 23, 2025
「ひろのぶ雑記」の冊子を購入(サイン入り)しました📕
そして、持参した著作に宇宙人と太陽の塔のイラスト&為書き付きサインを書いていただきました!
田中泰延さんとスタッフさんが踊ってます🕺#文学フリマ東京 pic.twitter.com/BBAB0MFgf1
向かいに座ってらっしゃる水野さんも一緒になって揺れ始めて、「見ていたら、つられて揺れちゃいますね」と笑ってくださる。気さくな方でした。
マガジンは、水野さんの文章、HIROBAの「対談Q」から写真家・濱田英明さんとの対談、清志まれ(水野さんの作家名)の作品『幸せのままで、死んでくれ』からと、清志まれとして書かれた【ある手紙「君へ。」】。
文章なのか、詩なのか、詞なのか。
意味でもない、理解でもない、もっと奥のところでポク、ポク、と鳴るような心地よさ。
読みながら、「ああ、これ、『いい音がする文章』だ」と感じました。
ちなみに、HIROBAのWebサイトでは、毎月「対談Q」が更新されています。
その中には、談笑一門の初真打・立川吉笑師匠との対談回もあります! 路上ライブ出身のいきものがかり。「落語と路上ライブは、目の前にお客さんがいる感覚が近い」とか、いやーおもしろい! ぜひ、こちらも読んでみてくださいね。
『ひろのぶ雑記』オンラインストアで販売しています!
ひろのぶと株式会社が今回文学フリマ東京41で発売した『ひろのぶ雑記 vol.3』。
昨日より、オンラインストアをオープンしました!

また、残りはわずかですが『ひろのぶ雑記 vol.1』『ひろのぶ雑記 vol.2』も予備分を大放出! これが本気のラストチャンスで販売しております。
ぜひ、1・2・3そろえてお楽しみください!
他にも買いたい本や知人の出店はあったのですが、どんどん規模が大きくなる上に5時間だと、なかなかブースを離れられなくて……せめて、もう1時間でも長ければ、交代で順番に30分くらいずつ回ってこられるのになーと思う。知人のものは、オンライン販売など今後あればまたゲットしてみます。
以上、長いのも宣伝が潔いのも、どんどん「街角diary」のルール無視が定着してきました(よろしくない)、廣瀬でした。また来週!
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廣瀬 翼
レポート / インタビュー
1992年生まれ、大阪出身。編集・ライター。学生時代にベトナムで日本語教師を経験。食物アレルギー対応旅行の運営を経て、編集・ライターとなる。『全部を賭けない恋がはじまれば』が初の書籍編集。以降、ひろのぶと株式会社の書籍編集を担当。好きな本は『西の魔女が死んだ』(梨木香歩・著、新潮文庫)、好きな映画は『日日是好日』『プラダを着た悪魔』。忘れられないステージはシルヴィ・ギエムの『ボレロ』。






