〝死〟は〝生きる〟の延長線。どう生きたいかが表れる。
—— 小野さんの有機還元葬のように、市川さんも埋葬の希望はあったりしますか?

私は、海に還りたい派です。「海に還りたい」と一言でいっても、海洋散骨、火葬せずに海に沈める海洋葬など、いろんな選択肢があります 。今はまだ日本では法律上難しいのですが、私は「海洋葬」ができるといいなって。お魚にツンツンとかされて、動物と同じように海で自然に還りたい。
—— 海だけでも、いろんな埋葬法があるんですね。

世界に目を向ければ、もっともっといろんなサービスが提供されていますよ。バルーン葬や、宇宙葬もあります。

—— そんなに……! それにしても、希望の埋葬法がどちらも「自然に還りたい」というのは、お二人の価値観に似通っているものを感じます。

そうなんですよね。海か大地かは違うけど、根源は「自由でいたい」「自然に還りたい」というところだから。私たちが親しくなった理由も、そういった価値観が共通していたからというのがあります。
—— 「Deathフェス」が生まれたリトリートの以前から、お知り合いだったんですか?

もう、18年かな……?

考えてみたら、長いね。当時、私は世田谷の子育て支援をしていたのですが、そこで開いた集まりに梨奈ちゃんが来てくれたんですね。
それで話をしていたら、二人とも同じ助産院で出産していたことがわかって。「あそこなの? 一緒だね!」と親しくなりました。

同じ出産でも助産院と病院は違って、当時は助産院や自然出産が話題になっていた頃ではありましたが、それでも助産院を選ぶのは一部の人たちでした。
その中でも私たちが出産した助産院は、インドのアーユルヴェーダを取り入れたりしているユニークなところで、自分の価値観に合うものを選ぶことを大切にしている個性的な人が集まっていたんです。

アーユルヴェーダは「体を温めるように、手首・足首を出さないようにして、体を冷やすものはできるだけ控えて」など、東洋医学の古来の知恵を取り入れて生活を整えていく考えがあります。それがしんどいって人もいるとは思うんですけど、私たちはその厳しさも含めて体の持つ力みたいなものを楽しんじゃうところがあって。
その「楽しんじゃう」クセというか姿勢は、今の「Deathフェス」の活動にも通じるものがあるかもしれません。
その後もお互いに事業を始めて、それぞれに協力したりとゆるく長く交流がありました。
—— 〝死〟を考えるお二人の出会いが、〝生〟がきっかけだったって、なんだか巡り合わせを感じますね。

そうなんですよ。不思議ですよね。

〝死〟は〝生きる〟の延長線だから、すべてのことにつながっていくんです。死を考えることは、自分がどう生きたいか、どうありたいか、そのために今をどう生きるかを考えることでもあるんですよ。
みんなで話せば、何かが変わる。「Deathフェス」は新たな文化をつくるムーブメント。

例えば、以前お酒を手に死生観を語り合う場で、遺骨を花火玉に入れて打ち上げて空中で散骨する「花火葬」の話が出たんです。そうしたら「その埋葬法がいいです!」とおっしゃった方がいて。
「もし花火になって最後の瞬間に誰かを喜ばせることができたら、すごくうれしい。自分の人生も悪くなかったと思える」って。
—— その話を聞いただけで、絶対いい人なんだろうなって感じます。

きっとその方も、ずっとそういうことを考えていたわけではないと思うのですが、花火葬というアイデアを聞いて初めて、その想いがクリアになったんじゃないかな。

—— まさに、気づかせ系。新たな選択肢を知ることで変化が起きた話ですね。

テクノロジーや社会の環境、価値観もどんどん変わっているから、〝死とその周辺〟にはアップデートできることも、しないといけないこともたくさんあります。
私は誰がその仕組みや文化をつくっているのかということに興味があって。
それが今の時代では誰かを縛りつけるものになってしまっているのなら、新しい発想を提案したり、みんなで新しい文化をつくっていったりしたいと思っています。

こんな考え方はどうかなって、みんなで発明し合えば、きっと社会課題や地域課題も変化していくと思うんです。
複雑すぎて、どこかの地域だけ、家庭だけでは解決できないかもしれないけれど、他の人と話すことで新たな発想が生まれたりしたら、何か変わるかもしれない。

「死は誰のものか」というと確かに難しいんですけど、たった一つの答えを導くのではなく、一つひとつ、その都度みんなで話して気持ちを伝え合い、一緒に考えていければいいですよね。
「Deathフェス」は、ポジティブに、でも真っ直ぐに、そういった新しい文化をみんなでつくっていくムーブメントを生み出していく場。だから、やっぱり「フェス」なんです。
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