「GOOD INNOVATION LAB」で毎週木曜日18時に配信されている動画コンテンツ『広告図鑑』。ビジネスプロデューサーの宮本安祐佳(みやもと・あゆか)さんと、コピーライターの田中泰延(たなか・ひろのぶ)が、さまざまな広告を紹介しています。
その『広告図鑑』を、『街角のクリエイティブ』でも特別に記事としてチラ見せ! 配信で取り上げる数々の広告の中から、毎回ひとつをピックアップしてご紹介します。
今回は5月8日(木)配信の「4月上旬の広告」より、特別に視聴者から寄せられた「どやねん広告」をご紹介。SNSで広がる批判と人権問題、不買運動について考えます。
日清完全メシ「どーせ食うなら完全メシだよね。 篇」|日清食品

今週の「どやねん広告」です。
日清食品のCMが、堀江貴文さん起用で波紋です。公開後、批判が高まり、不買運動の呼び掛けも見られました。こういった声の中には、堀江さんの過去の粉飾決算に関する刑事告訴や逮捕を指摘し、「コンプライアンスはどうなっているのか」といった意見も寄せられています。

宮本さんは、企業の広告にホリエモン(堀江貴文氏)が出ることについては、どうですか?

正直、堀江さんに対するイメージや知識がニュースで見ているくらいのものなので、どちらでもいいんじゃないか、というのが私個人の意見ではあるんですけど。
でも、企業としては過去に刑事告訴などされている人は起用したくないだとか、被害者の方がいた場合にはその人の気持ちを考えて起用しないべきであるという意見が飛び交うのは、まあ分からなくはないかなとは思いました。

なるほど。僕は、ポイントはいくつかあると思っていて。
まず「刑事告訴や逮捕」とありましたが、この人は裁判で有罪判決になって服役していますからね*。だから、刑務所から出てきている。

逆に言うと、刑務所に入って出てきた人というのは、フラットになっているわけです。刑期を終えているわけですから。

そうですよね。

それをことさらに言うのは、逆に人権問題であるということが一つ。
おかしいんです、それでギャーギャー言うのは。罪を償って、法治国家の中では終わっているわけです。

確かに、そうですね。

あともう一つは、まあSNSの中だけのことかもしれませんけど、すぐに「買いません」とか「不買運動」とか。いや、これね、そういう人も買うと思うんですよ、結局は。

声を上げたいだけ、というのもありますよね、多分ね。運動として。

「不買運動」みたいなことを言えば、匿名でSNSで世の中が動くんじゃないかと、祭りみたいにするという行為自体が、非常に情けないというか。そういう気はしています。
自分は黙って買わなきゃいいじゃんね、と思うんですけど。 なぜ、ハッシュタグまでつけて(やるのか)。この間もあったばっかりじゃないですか、東洋水産の*(不買運動が)。

そうですね、ありましたね。
これ、買う・買わないは個人の自由だと思うんですけど、それをSNSの場で公にして広めるのが、今っぽいっちゃ今っぽいですけど、どうなんだろうとは思いますよね。

企業側が本当に「あ、自分たちもよく考えたら悪かった」と思うなら別ですけど、そうじゃないんだったら、そういう(批判の声)に応じないというのもすごく大事かなと思います。企業側は完全無視するか、変なステートメントも出さないというのがいいかもしれません。

確かに。なるほどなぁ。
絶対にCMのキャスティングをする時って、コンプラ的に問題ないかなど、候補の方の過去のリサーチをするじゃないですか。でも正直、どこまでがOKでどこまでがダメみたいなところが、難しいなと思っていて。

ふむふむ。

例えばですけど、某・元アイドルが全裸で公園にいて捕まったみたいなのは、もう反省もしているし、それぐらいだったらOKにすると。
でも、例えばですけど、仮に某有名人が殺人を犯しましたと。それで10年・20年服役して復帰して起用しますと。
そこは、罪の重みとか、やったことの重みが全然違う時に、それは難しいなと思いますけど。罪を償う・償わないとか、服役した・しないの話だけでは片付かない気もしつつ。
でも、堀江さんはここまで、こんな運動に巻き込まれてかわいそうにという気はしますね。

宮本さんのおっしゃる通りで、例えばもっと重い罪を犯した人の場合は、すでに起用するかしないかという俎上に上がらないわけですからね。

そうですね。

(俎上に)上がっている時点で、たいしたことではなかった。もしくは、その罪の件は有罪になったけれども服役して終わって、今元気に活動しているという、(俎上に上がらないようなケースとは)全然違いがあるわけですから。

確かに。考えさせられました。ありがとうございます。
* * *
5月8日(木)配信の「4月上旬の広告」では、他にも……
- ・宇宙人ジョーンズ×四姉妹のクラフトボス「世界のTEA」CM
- ・未来と異世界を感じさせるキューピーマヨネーズ100周年CM
- ・SNSで話題になった、企業によるエイプリルフールの投稿
など、全部で5つの広告事例を紹介。
さらに、読者から情報が寄せられた「これってどうなの?」という広告を紹介する「どやねん広告」のコーナーでは今回紹介した事例のほかにもう1事例が取り上げられています!
ぜひ、全編もチェックしてくださいね!
※『広告図鑑』の視聴には、GOOD INNOVATION LABのプレミアム会員登録が必要です。
プロフィール

宮本安祐佳(みやもと・あゆか)
CHOCOLATE Inc.所属 / ビジネスプロデューサー
フリーランスのCreative Director&PlannerとしてCMやSNS、D2C、場づくりなどを手がけている。
X(Twitter):@ayuka_miyamoto

田中泰延(たなか・ひろのぶ)
ひろのぶと株式会社 代表 / コピーライター
東京コピーライターズクラブ、大阪コピーライターズクラブの審査員も務める。著書に累計20万部の『読みたいことを、書けばいい。』『会って、話すこと。』(ダイヤモンド社)他。
X(Twitter):@hironobutnk
GOOD INNOVATIN LABとは
世界のイノベーティブなヒト、モノ、コトを紹介するコンテンツサービス。コピーライターのオンライン講座をはじめとして、広告プランニング、クリエイティブディレクションなど、大手広告会社で活躍する一流のクリエイターからクリエイティブの知識と技術が学べる講座、イベントが充実しています。
街クリ 編集部 レポート/インタビュー
編集部も記事を書いています。