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2025年10月15日「街角diary」廣瀬翼がお届けします。

廣瀬 翼


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10月10日には大阪・TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISEさんで開催した『踊る阿呆の世界戦略』のイベントが大盛況をおさめ

約100名を熱狂させる寶船のパフォーマンスを見つめるしゃちょうの背中。最初、ひょっとしてしゃちょうは泣いているのではないかと思ったほど、その背中からは感動が溢れていた。

全員が立ち上がって阿波踊り。私の母は翌日、職場の徳島出身の人に「こうやって教わったよ」と話したところ、その方がうれしそうに「廣瀬さん! もう、阿波踊りできてます!」と言われたのだとか。

10月11日には閉幕直前の万博へ行き

台風も心配していたのですが、ちょうど良いお天気で気持ちがいい青と白だった。

大屋根リングの一部を海にかける設計は、素晴らしい発想だったと思う。万博からつながる大きな世界と、ここから広がる可能性と、海の水面に映る空に未来を感じた。

閉園前、大きな月に向かうミャクミャクは、月に吠えるライオンのようだった。前姿よりお尻のほうに写真を撮る人が集まっていた気がするが、お尻ってかわいいよね。

10月12日には鳴門にある大塚国際美術館を歩き回り

大塚国際美術館は、西洋名画1000余点を陶板で原寸大に再現した美術館。大聖堂なども、本物サイズを体感できる。

10月13日には渦潮を見てきた私だが

ここから船に乗って渦潮へ。

イベントのお礼か、泰延さん・加納さんに続いて万博についてかを更新するかと思わせておいて、いつも通りの「平和です。」を更新しようと思う。

理由は簡単だ。写真を撮りすぎて全く写真の整理が追いついていない。

イベントについては、ひろのぶと株式会社のnoteで、万博や旅行については個人のnoteで更新できればと思う……そのうちね。

連休明けのひろのぶと株式会社は、食料が豊富だ。

朝の新幹線で東京へ戻ってきたしゃちょうが持ってきてくれた「とん蝶」。

私が西から密輸した「カール」(東京では売られておらず、今や関西限定商品)。

寶船で徳島出身のマッキーさんがくださった、すだちポン酢味のポテチ。廣瀬の大塚国際美術館の土産、上田豪さんの福島土産「ゆべし」、他にもイベントでいただいた差し入れなどなど。

写真にはまだ写っていないものもある。

そういえば、最近差し入れをいただく際に、キラキラした顔で「みんなでケンカして取り合ってくださいね!」と言われるようになった。なぜうれしそうなのか。私は平和に過ごしたい。

そういう報告をしたら、泰延さんは「みんなでケンカしてるんじゃない、加納だけやケンカしとるんわ」と呆れていた。

とにかく、こうして食料が豊富になると当たり前のように開かれるのが、ひろのぶと株式会社のお茶タイムである。

特に「とん蝶」は当日賞味期限。餅米でお腹にたまるので、これが私たちのお昼ご飯でもある。

「食べましょうか」と言いながら、なかなか作業から離れない私たちに、泰延さんがテーブルについて「先にポテチを待っている間に味見……」と言うと、加納さんが雷のような存在感ですっ飛んできた。


加納「待って! あかん! まずはとん蝶でしょ!」

田中「別にええやん、ちゃんと残しておくし」

加納「それは違うの! あかんの!」

田中「なんでや」

加納「味が混じるじゃないですか!」

田中「別に混じらんやろ、ポテチととん蝶は別々に食べるんやから」

加納「とにかくあかんの!」


加納さんが強制力を持ってポテチを没収する。

こりゃいかんと、私はとん蝶を食べるモードにすべく、ランチョンマットを取り出して会議テーブルに敷きながら「お湯沸かしますか」と聞いてみた。

するとしゃちょうが立ち上がり「俺が淹れるわ」という。お茶担当に誇りを持っている様子。

しゃちょうがお茶を淹れに行くのを見て、加納さんが「みそ汁温めよ」と冷蔵庫へ向かう。

いつもお弁当にみそ汁を持ってきている加納さん。

ちなみに加納さんの「みそ汁」の発音は独特で、「み」にアクセントがくる。文字でなんとか表現すると「そ↘︎しる→」。

加納さんの準備も、しゃちょうによるお茶もできたところで、豪さんにも声をかけ、みんなで「いただきます」。


加納「とん蝶って、いろんな味があるけど、最後はやっぱりノーマルが美味しくて戻ってきますよね」


加納さんがご機嫌だ。

そんな横で早々に食べ終わったしゃちょうが、再びポテチを開けようとする。


加納「待って! なんで!」

田中「ええやん、俺もう食べ終わったし、全部を一人で食べるわけちゃうやん」


ここは泰延さんの押し勝ち。

ポテチを机中央の取り分け皿に開けて、パクパクと口へ運ぶ。

そこにとん蝶を食べ終わった豪さんと加納さんも参戦するが、食べるのが遅い私はだいぶ遅れていた。



加納「泰延さん、そんなに食べたら無くなっちゃう」

田中「まだまだあるやん、普通に取ればええやん」

加納「廣瀬さんがギラギラした目で見てますよ」


見ていない。断じて、そんな物欲しそうに恨めしそうに見ていない。

ただ、一生懸命にとん蝶を噛み締めながら見つめていた視線の先が、たまたまポテチの山のあたりだっただけで、ぼーっとしていた。


田中「そんなふうに見てないやろ(笑)。それは加納やろ」

加納「見てますよ、私見たもん。ねぇ?」


加納さんからの「はい」の強奪。YESともNOとも言えず、とん蝶を食べ続けていたけれど、私はどんな表情をしていたのだろうか。

泰延さんがポテチの手を止めて、ゆべしを開けようとする。


加納「なんで!」

田中「ポテチとっておいてほしいんやろ」

加納「だけど、それは違うじゃないですか」

田中「一個ずつやん、自分も食べればええやん」


ここも押し切りでゆべしを食べ始める泰延さん。

少し遅れて加納さん、豪さん、廣瀬もゆべしを食べはじめ、「すごくもっちり!」などワイワイ話す。

私がゆべしを一口かじったぐらいだろうか、またも泰延さんがガサゴソとお菓子の山を探り出した。



加納「何?!」

田中「もう一つくらい、開けようかなと思って」

加納「あかん!」

田中「なんでや」

加納「みんなで同じものを食べるのがいいと思うんです! みんなで同じのを食べることに意味があるの」

田中「そのみそ汁はなんなんや」


加納さんだけのみそ汁を指して泰延さんが言う。


加納「お湯を注ぐだけのみそ汁があるから、みんなも飲んだらいいじゃないですか」

田中「そういう話ちゃうやろ、それ違うみそ汁やし」



「なあ?」と泰延さんが私に「はい」を求めてくる。

頼むから、私から「はい」を強奪するのはやめてほしい。

私は平和に過ごしたい。どっちに肩入れするのも怖い。


ゆべしが、あと2つ残っていた。


田中「そしたら、これじゃんけんしたらええやん」

加納「違う、それは今じゃない」

田中「どういうことや」

加納「それは、夕方にしましょう」

廣瀬「えっ?! 今日、2回もお茶タイムするつもりなの?!」


思わず声を出してしまった。


加納「じゃあ、明日。明日にしましょう」

田中「急変更か」

加納「廣瀬さんが『私の時間をなんだと思っているの』って言うから」


言っていない。

断じて、そんな身勝手に不躾なことは言っていない。

言っていないが、若干そんな気持ちが含まれていたのは否めない。

眼鏡同士でも、対立する感情はすぐに伝わるようだ。

やってしまった。一番敵にまわしてはいけない人を、一番敵にまわしてはいけない話題で、責めてしまった。

眼鏡同士では心は読み合えないのだと思っていたが、気をつけねば……。


そんなやりとりに、泰延さんがフフフと笑う。


田中「思い出した。こんな感じやったわ。三連休は平和に過ごしてたのに」

廣瀬「え、今じゃなくて連休のほうが平和ですか?」

田中「ここは戦場や、食べ物の攻防が激しい」


そう言いながら、笑っているじゃないですか、しゃちょう。

それを聞きながらずっとニコニコしている豪さん。

好きなんでしょ? その平和な争いが。

ひろのぶと株式会社はいつもこんな感じだ。平和です。

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    1992年生まれ、大阪出身。編集・ライター。学生時代にベトナムで日本語教師を経験。食物アレルギー対応旅行の運営を経て、編集・ライターとなる。『全部を賭けない恋がはじまれば』が初の書籍編集。以降、ひろのぶと株式会社の書籍編集を担当。好きな本は『西の魔女が死んだ』(梨木香歩・著、新潮文庫)、好きな映画は『日日是好日』『プラダを着た悪魔』。忘れられないステージはシルヴィ・ギエムの『ボレロ』。