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2025年8月29日「街角diary」加納穂乃香がお届けします。

加納穂乃香


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お前がいうな。

8月10日、東京から島根・松江に帰省する日。
東京から岡山への新幹線は動いていたけど、
岡山から松江へ走る「特急やくも」は、ほとんどの列車が大雨で運休になった。

朝の7時、東京の自宅で起床してすぐにそれがわかって、
ひとまず松江に住む父に電話をかけた。

すぐに電話に出てくれた。
父も事態に気づいて連絡を待ってくれていたのだろうか。


「はい、もしもし。」


もしもしとはよそよそしい。
いつもは、「おぉ。」とか「なんだや。」とか、適当な声かけから始まるのに。


「あ、お父さん。 やくもが運休になって、岡山までは行けるけど、そこからどうしよう」

「ちょっとちょっと、何?」


いつも冷静で落ち着きのある父はこんなこと言わない。
確かに年配男性の声だけど、父らしいあたたかみのある声じゃない。

電話できない状況で誰かが代わりに出てるとか…?
もしかして、監禁とか?!


「お父さん…じゃない?  ……ダレ?!?!?!」

「誰ってこっちが誰だよ!」


番号をよく見ると数字を1つ間違えて登録していた。
朝から大変申し訳なく、丁重に謝って切った。


父は文句も言わず、岡山まで車で迎えにきてくれた。
雨がすごかったから、片道3時間。往復6時間。
ありがたい。
ありがたい。
将来はこういう親になりたい。

* * *

確か、8月25日だったと思う。

8時半、目覚ましを止めようと携帯を見ると着信だった。

見覚えのない番号だったけど、親戚とか知り合いかも、と思って出てみた。

「ぁい、もしもし。」

声を張ってみるも寝起き感バレバレで、ちょっと情けない。

起きて会社に行く準備をしなければならない時間だし、
ささっと終わらせるか、もしくは折り返しするって言おう。


「もしもし。こちら山口県警の者です。加納穂乃香さんのお電話にかけています。ご本人ですか?」

……

おい。

詐欺やないか。


朝から詐欺。
朝ラーとか朝カレーみたいに、朝詐欺をいただいた。

神妙に聞こえてほしいのか、刑事ドラマのヤマさんみたいな声を捻り出して、
オラつきながら喋ってくる。

とりあえず話を進めることにした。


「はい、本人ですけど。」

「あなたにね、事件のことで話を聞かないといけないんですよ。山口県警まで来てもらえますか。」

「えぇ…山口ですか…」


山口と聞こえてきた時、組の者かもと一瞬考えたけど、確かに県警と言った。


「何時に来れますか。取調室の時間を取らないといけないんでね、正確に。」


頭は起きてても、顔の筋肉が起きてないからうまく話せない。

「山口…はひぃ…」といった感じでモゴモゴしていたら、

「寝起きですか。」と、つっこまれた。


さすが、朝詐欺師は余裕がある。
ほっといてほしい。


「あ、はい。今起きました… えっと、車で12時間はかかるので夜の9時に行きます。」

「あなたねぇ。東京からそんなにかからないでしょう。山梨ですよ。

寝ぼけて聞き間違えていた。
山梨組というのは聞いたことがないから、組の者でないこともあらためて分かった。


しかし私が東京にいることがなぜ分かったのか。怖い。


「今から事件の詳細を話します。周りに聞こえない場所に移動してください。」

「ええと… メモ取っていいですか。」

メモは許可された。
いいんや。


「ここから録音しますから。」

と言われたところで、どの口が?! と急に笑えてきた。

「録音て、ちょwwwww」

と笑ってしまったのがダメだった。


切られた。


 

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    ひろのぶと株式会社 事務局長。株式会社街クリ 取締役。パンチニードル職人。