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2025年11月20日「街角diary」上田豪がお届けします。

上田 豪


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ちょいと気になる⑫

しかし、一週間経つのが早い。

あっという間に街角diaryの俺の順番が回ってきた。
といっても、俺の担当は木曜だからまだいい。

ひろのぶさんなんて、祝日になることも多い月曜日が担当だから場合によっては休日に街角diaryを書いてたりするわけで、ワークライフバランスはどうなっているのかと思ったりもするし、年末年始の街角diaryの更新はどうなるんだろうと思わなくもないし、大晦日は水曜日で紅白のためにNHKにいるだろうから書けないよな俺とか思いつつ気づかなかったことにして黙っておく。

それでも個人的には街角diaryという「文章を書く機会」はありがたいと思っている。ただ、書くといっても俺が書けるのは与太話のみ。しかし与太話とはいえ毎週文章を書かなきゃいけないという状況は、ここ数年長い文章の読み書きができなかった俺にとって、いいリハビリになっているような気がするのだ。

とかなんとかいって、珍しくすらすらと筆が運んでいる様を装っているのだが、いつも通り今週もノーアイディアのまま街角diaryを書き始めている。

というわけで、今週も「いま何を読まされたんだろう」という気分を味わえる木曜日。


*****

11月14日。

事務所へ向かう道中、中央線の中でTwitterを見ていたら、やたらと『翔んで埼玉』関係のポストが俺のタイムラインに流れてくる。

そうか。今日は埼玉県民の日か……。

埼玉県民の日といえば、中学一年の二学期に東京都民から埼玉県民となった俺にとっては、10月1日の都民の日と並んで馴染み深い日だ。ちなみに埼玉県民の日は県内の公立の学校は休みになる。(都民の日も同様)

ただ、埼玉の中学生がその日は休みだからとイキって池袋や新宿に遊びに出た結果、きっちり補導されるケースが続出する。


それを防ぐためなのかどうかは定かではないが、その日は県内のJR以外の鉄道が乗り放題になる一日乗車券を発売したり、遊園地や動物園の入園を無料にすることで、イキり盛りの中高生を県内に止めようという施策が行われている。これ本当。

と、ここまで書いて思い出した。


*****

中二の時の埼玉県民の日のことだ。
中学の仲間たちと一緒に映画を見ようと、リスクを承知で朝早くから西武線に乗って新宿まで行った。

歌舞伎町に到着。今はなきコマ劇場の噴水前で映画館の開館を待つ行列に並んでいた。

すると数人の大人が近づいてきた。
しかし、近づいてきたのは補導員ではなかった。
あからさまな格好の、数人のどチンピラ風味の方々。

彼らは募金箱を手に持ち「災害復旧のため」という名目で行列に並んでいるひとりひとりに募金をするよう威圧的にお願いして回っていた。

辺りを見渡せば、いたるところでそのあからさまな方々が募金箱片手に噴水周辺にいる人たちに募金をするよう求めている。

明らかにニセ募金。社会貢献という名のカツアゲ。

前の週に地方で台風の水害があったのは確かだったからなのか、それとも威圧感に気圧されたからなのか、行列にいる大人たちは、仕方ないという諦め顔で次々とその募金の求めに応じていた。

え? みんなマジで募金してるぜ? どうする?
顔を見合わせた仲間に目配せをした。

順番が回ってきた。

「俺たち中学生なんで学割でお願いします」と10円入れた。すかさず仲間たちが次々と10円を入れ出したのを見てチンピラたちが舌打ちしていた。笑いをこらえるのが大変だった。

後にも先にも募金して舌打ちされたのはこの時だけだ。


*****

話が脱線した。

そもそも〇〇県民の日みたいなものって、全都道府県にあるもんだと思っていたのだがどうなんだろう。

ちょいと気になって、アフタヌーンティーの時間に加納(元島根県民)と廣瀬(元大阪府民)に聞いてみた。

なんということか。

大阪にも島根にもそんなものはないというのである。

©横山光輝


なぜか島根にはなさそうな気はしていたがまさか大阪にもないとは。

これは由々しき問題だ。
大阪府民の日に大阪のイキった中高生が京都に行って補導されたり、島根県民の日に島根のイキった中高生が広島に行って補導されたり、みたいな日がないのだ。なくてもいいのか。かのうほのか。おのののか。

あまりの衝撃に、加納の「島根には竹島の日があるからいいんです」とか廣瀬の「私は私立だったんで」という発言を聞き流しながら、都道府県民の日を制定しているところはどれだけあるのか俄然知りたくなって調べてみた。思い立ったらすぐやる課。


北海道 7月17日
秋田県 8月29日
福島県 8月21日
茨城県 11月13日
栃木県 6月15日
群馬県 10月28日
埼玉県 11月14日
千葉県 6月15日
東京都 10月1日
富山県 5月9日
福井県 2月7日
山梨県 11月20日
静岡県 8月21日
愛知県 11月27日
三重県 4月18日
和歌山県 11月22日
鳥取県 9月12日
愛媛県 2月20日
鹿児島県 7月14日


制定しているのは19自治体しかない。
全都道府県の半分もないし半分少女といえば小泉今日子だ。
なかでも休日になるパターンはもっと少なく、茨城・群馬・埼玉・千葉・東京・山梨・愛知だけらしい。(俺調べ)

Wikipediaの受け売りなので多少間違いがあるかもしれないが、概ねこんな感じだろう。


都道府県民の日が制定されていない地域に住む中高生の諸君!
都道府県民の日が休日じゃない中高生の諸君!
君たちはこのままでいいのか!
国民よ!悲しみを怒りに変えて!立てよ、国民よ!

©創通・バンダイナムコフィルムワークス


*****

そこで俺からの提案がある。

すべての都道府県がそれぞれ都道府県民の日を制定するのはどうだろうか。

そしてすべての都道府県民の日を、いっそ国民の休日とする。
なんだったら公約にしてもいい。

これが実現すると単純計算しても年間40日以上は休日が増えることになり、家族の時間も増え、うっかり補導される中高生はいなくなり、なにより国民全体のウェルビーイングに寄与すること間違いないと思うのだ。どうよこれ。


どうでもいいか。どうでもいいな。

 

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  • 上田 豪 広告・デザイン/乗り過ごし/晩酌/クリエイティブ


    1969年東京生まれ フリーランスのアートディレクター/クリエイティブディレクター/ ひろのぶと株式会社 アートディレクター/中学硬式野球チーム代表/Missmystop