今日は出雲弁の話をしに来ました。
年配になるにつれ方言の濃度が増していくのはどの地方でも一緒だと思います。
奥出雲に住む88歳の祖母が、私の父「シュウジ」を呼ぶと、
「おい、シューズよ」
靴になります。
そういえば、祖母の出雲弁をずいぶん前に録音したなーと思い出して、2日間ずっとデータを探していました。
ありました。8年前の2017年5月でした。(驚愕!! 私、24歳! ピチピチギャル!)
祖母と近所のおばあさんとの会話です。
ひとまず聴いてみてください。
内容が掴みにくいですが、食材の保管方法について話しています。
解説です。
はじめに、祖母が「ここにある上等な袋(ジップロック)がもったいないからそこに食材を入れたら?」と提案しますが、近所のおばあさんは「袋が上等なのはいいけど、夫に食品の完成は梅雨が明けてからがいいと言われた。でも梅雨明けに間に合わせようと思うと、今からだと準備が間に合わない」と言います。何かを漬け込むのでしょう。
祖母は「なぜ間に合わないのか?」と聞き、近所のおばあさんは「蚊が好んで来るからだ」と言って、祖母は納得します。ジップロックだと虫に匂いがバレるのでしょうか。
その後、祖母は「タッパーに入れたら?」と提案し、近所のおばあさんは「今は壺に入れているけど、最後の方は固まる」と言い、祖母は「蓋がちゃんと閉まっているか?」と聞きますが、閉まっているけどそれでもダメなようです。
近所のおばあさんは「新しいタッパーが欲しいな」と言いますが最近は価格が高いみたいです。近所のおばあさんは「2,000円くらいするのでは? いま買いに行こうと思って。」と言いますが、祖母は「えぇ?! そんなにしないよ、もっと安いよ!」といいます。
最後に近所のおばあさんが「それはそうと(山菜の)わらび食べる?」とその場にいた私に聞いたところで終わっています。
こんなに濃い方言は若い人はなかなか使いませんし聞いたこともないかもしれません。
特に「上等だけん、いいだだも」と言っているところは、「上等だから、いいんだけど」が標準語です。
「〜なんだけど」を「〜だも」という言い方は年配の方特有で、60代の父でも使っていません。
それから、「はぁ〜?」という感嘆は通常なら呆れや怒りの場合に使いますが、年季の入った出雲弁では怒りというよりは、驚きや大きな反応をする場合などに使うように思います。
年配vs年配の会話は、40代より下の世代にとってはもはや外国語のようで、全体の内容は掴めても正確に聞き取ることは無理そうです。
出雲弁はイやウの母音に寄せて発音されるのが特徴で、「ズーズー弁」とも言われています。東北の方言とよく似ているということで、松本清張の『砂の器』では物語の重要ポイントになっています。それでも映画のなかでは聞き取りやすいように発音されていると思います。
ストーリーも音楽もすさまじいのでぜひ観てください。
では、また来週。
加納穂乃香
日常
ひろのぶと株式会社 事務局長。株式会社街クリ 取締役。パンチニードル職人。